いつもの時間に、いつもの場所へと向かう。彼が海のかなたに消えていった日から続けてきた習慣。
北の海の冬は早く訪れる。シンシンと雪が降り積もるなか私は海へと向かう。もしかしたら今日帰ってくるかもしれない。そんな淡い期待を胸に通い続けて早8年。彼わ遠い海で名をあげ、今や誰もが恐れるルーキーの一人となってしまった。
海へ向かう道すがら、"あの日"を思い出す。
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「ロー、行っちゃうんだ、、、」
「あぁ。」
「、、、死ぬかもよ」
「そうかもな。だが俺に「野望がある。第一、死ぬ気がないから死ぬわけない、、、でしょ?」
「くく、ご名答。よくわかってんじゃねぇか。なら俺が今から言うこともわかってんじゃねぇか?」
「――――…つれていかない。、、―――でしょ?」
「惜しいな。正しくは、つれていけねぇだ。俺にはまだ力がねぇ。まだ×××をつれていけねぇんだよ、今のままじゃな。だから俺に5年お前の時間をくれ。俺がお前を守れるぐらい強くなったら必ず迎えに来る。」
「ほんっと俺様。私が違う人から求愛されたらどうすんの?」
「奪うまでだ。お前のことはよくわかってる。誰といるのが一番幸せかもな」
「5年しか待ってやんないんだから。」
――――
あれから8年。約束の時間はとっくに過ぎたのにまだ来ない。でも、彼の言う通り私の幸せは彼と共にあるみたい。だから待つ他ない。
今日も来なかった。もう約束なんて忘れたのかも知れない。悲しみがそっと押し寄せてきて視界が曇った。
泣くな、泣くな、泣くな自分。
海からの帰路はいつもこうだ。一人が悲しくてでも泣いたら彼を信じる気持ちが揺らぐから必死で堪えて、、
家についた頃には気持ちも静まり、落ち着いた心で玄関の鍵を開けた。
「――――なっ――…なんでっ――」
「待たせたな」
「何で?、、貴方、ほんとにロー?」
「あぁ」
「―――5年でむがえ゛に、、っぐる、っでゆっだのに゛」
「すまない」
「まっでだ。ーッヒック」
「知ってる。今日はお前を拐いにきた」
よしよしと頭を撫でるローが愛しくて、どうしようもなく愛しくて顎を捕まれなされるままに顔をあげると、唇に暖かいものが触れたんだ。
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まって、まって、まって
落ちた果報は甘く愛しい