五年か…
海列車からみえる島を眺めながらそう思った。
「五年住んだが…こんな島にゃあ…名残惜しむ情もわかねぇ」
自分に諭すように、わからせるようにそう吐き捨てるが、頭で思っても心は理解してくれちゃいない。
最初は"材木屋の娘"としか思わなかった。
あの日からだ…あいつを…×××をトクベツに思いはじめたのは、、
雨が降る夜だった。ドッグからブルーノの店へ行く途中細い路地から女の声がした。
普段のおれなら素通りしただろうが、その日のおれは何の躊躇いもなく路地に入り海賊に襲われている×××を助けた。
その時、×××は言ったんだ
"ありがとう、ルッチさん。貴方は私の正義のヒーローですね"
と
さぞかし怖かったのだろう。しがみつく手は震え、目には涙が溜まっていた。
泥にまみれぐちゃぐちゃな顔はお世辞にも美しいとは言えないが、おれにとっちゃそんなことどうでもよかった。
×××は疑うことなくおれに言ったのだ。
おれが正義だと。闇で生きるこのおれが、正義だと。
今まで自分のために強くありたいと望み、また叶えてきたが。
だがおれはその時初めて、誰かのために強くありたいと願った
願ったのに
「ルッチ、お主さっきから様子が変じゃぞ」
「もしかして、あの島に未練でもあったのかしら?」
「――――…あるわけないだろう」
ゆっくりと瞼を下ろす。写るのは×××の最後の顔
泣かせたい訳じゃなかったのに
ただ笑っていてほしかったのに
誰にも言えないから
闇に生きるCP9。
甘い感情は許されぬなら、
どうか神よ、
あの子に抱いたトクベツな感情を黒ずんだ心から拭い去ってくれないか