ポカポカと暖かい日が射す午後、朝方干した洗濯が潮風に揺られているのを眺めていた。
不意に聞こえた、誰かが言い争う声。それにつられて食堂と繋がっているテラスのところへ来てみれば、既に人が集まりかけていて
その中心には顔を赤らめ怒っているエースと、それとは対照的に冷めた目をしたマルコさん。
何をもめてるんだろ?
暢気にそんなことを思っていたあたしは二人の話を聞いた瞬間、体が凍りついた
二人がもめていたのはあたしのことで
マルコさんはともかく、エースも少なからずあたしに疑念を抱いていた事実にショックを隠せない
回りのみんなもチラチラとあたしを見ているのがわかる
―俺もあの女、うさんくせぇとは思ってたぜ―
―おやっさんに指一本でも触れてみろ、黙っちゃいねぇぜ―
―化けの皮が剥がれんのはいつだろうよ、ははっ―
ざわつく周囲の声に混じる悪意のこもったソレはあたしの心をえぐるには十分で
溢れそうになる涙を必死に堪え、その場をあとにした
その日の夕ご飯。なんとなく食堂に行くのがためらわれて、扉の前で立ち止まっていると、後ろから声をかけられた
「なぁ、リン。そうやって逃げれば逃げるほど自分の場所はなくなってくぜ?」
それでもいいのか?と諭すように、流し目を寄越すイゾウさん
「飯食えば話も出来るだろ?言ってないことを言うチャンスなんじゃねぇのか?」
それだけ言い残し、お先にとでもいうかのように食堂に入っていった
言ってないことを言うチャンス、、、、
でも、今の自分のどこまでを話していいのかわからない
魔女だということ?
それとも、異世界から来たこと?
エース、、が死んじゃうこと?
今のあたしには、それを言う覚悟も度量もない
でも、
それでも、行動しなきゃ変わらないことは確かだ
がんばれ、あたし
自分にそう言い聞かせたあたしは、深く息をはいて、食堂の扉を勢いよく開けた