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《マルコSIDE》
サッチがティーチに刺された瞬間に全てを理解した。
『マルコ・・・出来る限りで良いから、サッチと一緒に居てくれないか』
こういう事だったのかよい。
理解して、負傷したサッチを守って・・・けれどまんまと悪魔の実を持ち逃げされた。
直後ティーチを追いかけて船を飛び出したエース。後に新聞にでかでかと載る、エースの公開処刑決定。
アイツ・・・リヒトの能力は親父や古株のクルーだけが知っている。
知っていたはずじゃねぇか。
全部知ってたんだ、アイツは。
サッチが怪我をすること、いや・・・おそらく俺が一緒じゃなきゃ、サッチは死んでたよい。
サッチが死ぬことを知ってた。エースが処刑されることを知ってた。
だから船を降りた。
辛かったはずだろい。何で俺達を頼らなかった。俺達を、家族を・・・
「馬鹿野郎」
「ごめん」
家族を頼らず、勝手に船を降りたソイツは、目の前でへらりと笑っていた。
「へらへら幸せそうに笑いやがって」
「だって、やっと迎えられた最良のエンドだ。誰も悲しんでない」
最良のエンド。
その言葉にぞくりとした。
コイツは何度、最悪のエンドとやらを経験したのだろうか。
俺達にはわからない出来事だ。
でも、きっとそれは、リヒトの心を何度も締め付け、何度も弱らせた。
なのにコイツは家族を頼らなかった・・・
「・・・代わりに皆怒ってるよい」
「あぁ、それは怖いなぁ」
「馬鹿野郎」
「ごめん。でも、嬉しいんだ」
ごめん。
全然反省してない顔でそう言うリヒトを、俺は力いっぱい叩いた。
・・・俺だって嬉しくて泣きそうだよい。→戻る