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人はあまりにその前後の出来事で自然すぎると、自分がなにか異変に見舞われていることに気付けない。



ガチャッ

「あー、疲れたぁー、おーいペッシ、俺にも珈琲」




その場にいた全員が硬直した。


誰だかわからない男がアジトに入ってきた。

そして自然な動きで着ていた血濡れのコートを壁にかけて「あー、シャワー浴びなきゃなぁ」なんて言うその男。





「おい、ペッシぃー、何ぼけっとしてんだよぉ」

「ぇっ、ぇと・・・」


「ったく、だからお前はマンモーニなんだよぉ。プロシュートにいっつも言われてんだろぉ?なぁ?プロシュート」




自分たちの名前どころか、普段自分たちがどんな会話をしているのかも知っている謎の男に警戒する。

何時でも攻撃できるように立ち上がった彼らに気付いた男はきょとんとした顔をする。



「ん?何だよお前等、俺の事じっと見て・・・」

スタンドを出している彼らに何かが可笑しいと思ったのか、男はぎゅっと眉間にしわを寄せた。


そんな彼らのもとに、リーダーであるリゾットが姿を現し「何事だ」と言った。


リゾットと男の目が合う。

男の方がへにゃっと笑って「ただいま、リーダー」と口にした。




「あ、リーダー。報告書なら後で書くからさ、ちょっと待って――」

「・・・誰だ、お前は」



「は?」

リゾットと男・・・それどころか、この部屋全体に沈黙が広がった。




「おいおいおい、リーダー。何言ってんだ。それが任務終えて帰ってきた部下に対する言い草かぁ?もしかして俺任務で何かしくってた?」

「・・・・・・」


「ちょっ、シカトは良くねぇぜ、リーダー。待て待て。今任務内容再確認すっからさ・・・ぇーっと、確かパッショーネの裏切り者のスタンド使いの始末だろぉ?ちゃんと死体は消したし、返り血は浴びたけど、イルーゾォに手伝ってもらったから他の奴には見られず帰ってこられたぜぇ?」

イルーゾォは自分の名前を出されて「ぇっ、俺!?」などと言っている。



「お前のようなヤツは知らない。・・・何処の所属だ。俺達をからかっているのか」

「はぁぁああッ!?おいおい、今日はエイプリルじゃねぇぜぇ!?」


男はリゾットの言葉に驚いたような顔で言う。




「なぁ、メローネ!今日のリーダーは妙な冗談を言うじゃねぇか。お前の入れ知恵かぁ!?」

「・・・・・・」


「お前まで無視とか・・・おい、ホルマジオ!お前はそんなバカみてぇな冗談言わねぇよなぁ!?おーい、ギアッチョ!お前も何俺の事睨んでんだよ、ったく・・・今日は一体何なんだぁ?」

男は大きなため息を吐いて「俺何かしたかぁ?」と彼らを見る。

何をしたと言われても、誰だとしか言いようがないのだ。




「・・・そこまで俺たちの頃を調べ上げているなら知っているだろうが・・・俺のスタンドのメタリカで今すぐお前を始末することが出来る。お前は何者だ・・・はっきり言え」

「ちょっ!?や、やめろよリーダー!俺だって!ナマエだって!何で忘れちまってんだよ!敵のスタンド能力か!?確かに一発喰らったが、すぐにスタンド使いは殺したぜぇ!?」

焦ったように両手を上げるナマエと名乗った男。



「む?待てよ・・・スタンドの攻撃を食らったのは俺自身だ。リーダーたちには関係ないはず・・・もしや、俺に関連する人が俺のことを忘れてしまう能力?いや、ならば敵を殺した時点でスタンドの能力は解除されるはず・・・いや、死んだあとの方が強くなるスタンドの話も聞いたことがあるが・・・そういえば、今日殺したスタンド使いは“隠蔽”とか“隠す”ことが得意だったみたいだな・・・もしかすると・・・いや、まさか・・・」

一人ぶつぶつと言い出すナマエは、やがて真っ青な顔になってリゾットを見た。





「やべぇ・・・もしかして此処『俺がいない世界』なのか?」


「・・・・・・」

「それなら説明がつくじゃねぇか・・・普段だったら俺が帰ってきたらすぐにペッシの奴が『珈琲いりますかー?』なんて聞いて来るし、プロシュートとメローネとホルマジオも何かしら声かけてくるし、イルーゾォは俺が目の前にくるとまたからかわれると思ってすぐに鏡に逃げてくし、リゾットは帰ってきたら帰ってきたですぐに報告書出せって言って来るし・・・」

どんどん血の気を引かせていくナマエは「どうすれば良いんだっ」と頭を抱える。





「――早く帰ってリーダーに報告書出さないとメタリカされる!!!!!」

そっちかよ、というツッコミは誰が思い浮かべただろうか。





「・・・異世界、というものは信じられないが・・・」

リゾットはゆっくりと口を開いた。


「お前、スタンドは使えるか」

「もちろん。じゃなきゃ暗殺チームなんてやってらんねぇよ」

にやっと笑いながら自らのスタンドの出現させたナマエはそのスタンドをすぐに消した。




「・・・報告書は明日の朝までに出せ」

「えっ、リーダー?」


「後で話はゆっくり聞かせて貰う。以上だ」

「ま、まじで!?俺、此処にいても良いのか、リーダー!」

嬉しそうな顔をしたナマエはリゾットの去った後「あっ、自己紹介しなくちゃなぁ!」とにかっと笑って言った。




余談だが、その数日後にナマエは消え、また思い出したかのように再びこの暗殺チームに迷い込んでくるようになったというのは・・・何かの嫌がらせだろうか。







平行世界を行ったり来たり








「俺気付いちゃったんだよなぁ」


何度もこちらとあちらを行き来する体質となってしまったナマエの言葉に、リゾットは「何をだ」と言った。

もはやこちらとあちらの両方で暗殺チームのメンバーとなったナマエは、仕事に関しては引っ張りだこだ。



「俺、こっちの世界からあっちの世界を行き来しちゃうようになっちまったろ?時にはメシ食ってる途中でこっちに来ちゃうこともあるんだ。そこで気づいた・・・この手の中にあるピッツァはあっちの世界のものなのに何故こっちに持ってこられるんだって」

神妙な顔で言ったナマエはリゾットの手をギュッと握った。



「もしかしたら、俺に触れてるものも行ったり来たり出来るんじゃ――?」

その瞬間、リゾットは景色がぐるんっとひっくり返る感覚を感じた。






「・・・・・・」
「・・・・・・」

「あ、リーダー。こっちが前に話してたリーダーです。あ、リーダーもリーダーです」


目の前に自分がいる状況にリゾットは軽く・・・いや、多大なる頭痛を感じた後、すぐに元の世界に帰ることが出来た。




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