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本当は全て知ってた。


大好きな物語の世界に来れて、最強設定までもらっちゃって・・・

人生勝ち組みたいな気持ちで主人公組に近づいて


まるで当然のように彼等と仲良くなった。

そして当然のように旅に同行して、戦った。


最強設定だから僕はほとんど怪我なんてしなかったし、治癒能力まであったから皆の怪我もどうにか出来た。

仲間は皆僕を重宝してくれて、あぁなんて素敵な世界なんだ!って思ってた。




何をやっても上手くいく。

良いフラグばかりが乱立していて、回収するのは楽しかった。



でも・・・

今思うと、全部“上手くいきすぎていた”のだと思う。



本当は知ってた。

この世界の結末なんて。






「花京院――!!!!」


ジョセフさんの声でハッとしてみれば、DIOによって腹に風穴をあけられた典明君がいた。

でも僕は焦らなかった。

ストーリーはわかってた。だから何があっても驚かなかった。





「大丈夫!典明君は僕が助ける!」

出来るはずだと思っていた。



腹に穴が開いていたけど、ほんの少しだけ心臓は動いていたから。

イギーもアブドゥルさんも、無傷じゃないけどギリギリ生き残らせることが出来たんだから。


後は典明君を無事に生存させれば、見事ハッピーエンド。

次、杜王町の話になるまで、皆と楽しく暮らせば良いやって・・・

そう思っていたのに――







ピッ、ピッ、ピッ




・・・あの日から、典明君は目覚めない。




「典明君・・・」

スピードワゴン財団の所有する医療機関に保護されている典明君。


真っ白な病室の真っ白なベッドの上で、典明君はまるで死人のようにその身を横たえていた。

腹の傷は埋めたのに・・・



あの日、自信満々で典明君の傷をふさいだ僕は、せいぜい二日三日ぐらいで典明君が目覚めると思ってた。

旅は終わったんだから、皆で遊びに行きたいなぁ・・・なんて、軽く考えてた。




十日経っても起きなかった。

一か月経っても起きなかった。

一年経っても起きなかった。


イギーもアブドゥルさんも無事なのに、典明君だけ目覚めない。



最初こそ「まぁ、すぐに目を覚ますさ」と言ってくれていた承太郎君も、五年を過ぎてからは何も言わなくなった。

聞けば、典明君は今後目覚めるかどうかも危ういらしくて・・・




その時初めて理解した。


自分が如何に、自分の能力に・・・いや、本当は僕自身の力なんてこれっぽっちもなかった。

僕は、僕自身の力でもないくせに、まるで自分自身が有能かのように勘違いしていたんだ。







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