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俺と彼は割と仲が良いと思う。


良く言えば几帳面、悪く言えば偏屈。

そんな彼の名は虹村形兆。


見た目からして不良で、周囲には若干避けられているものの、成績は良い。女子にモテる。

弟がいるらしいが、弟君には会ったことはないし、正直特に興味もない。



俺と虹村は、俺から言わせれば馴染。虹村から言わせればきっと腐れ縁。

小学校、中学校・・・歳を重ねて言っても、クラスはほとんど一緒だった。


付き合いが長いと、それだけお互いの事を知ることになる。まぁ、虹村の方はどうかわからないけどな。



ただ、クラスで虹村と会話をするのは殆どが俺で、虹村から時折声を掛けられるのも俺ってだけの話。

声を掛けられると言っても、ほんの一言二言程度であるけれども・・・







「・・・名字」


だからこそ、インターホンの音でそそくさと玄関までやってきた俺は、扉を開けて驚いたのだ。

玄関前にたたずむ・・・虹村形兆の姿に。




「・・・珍しいな、虹村。お前が俺を訪ねてくるなんて」

元来俺は思ったことが表情に出てしまうタイプで、今だってきっと俺の顔は驚きを隠せずにいるだろう。


それほど、虹村が俺の家に訪れることはない。

最後に俺の家を訪れたのは、小学生の頃俺が風邪で学校を休み、先生に頼まれた虹村がプリントを持ってきてくれた時以来だと思われる。




「あぁ。近くを通ったからな」

近くを通る。その言葉に若干の疑問を覚えつつも、俺は「そうか」と頷いた。


最近は何やら虹村も忙しいのか、放課後はすぐに帰って行くか、時には学校を休むこともあった。

今日は虹村は学校を休んでいて、俺も多少は心配していたところだった。





「あー・・・上がってく?」

「あぁ」


仕事の関係で出張の多い両親は今日も家にはいない。

虹村が家を訪ねてくるなんて不思議なこともあるもんだなと、俺はそれ以上は特に考えることなく虹村を家へと招き入れた。


綺麗に靴を揃えて家に入ってくる虹村にちょっと笑いつつ、虹村を俺の部屋へと誘導する。

適当な座布団を「ほい」と渡せば、これまた姿勢よく虹村はその場に座った。俺と比べてずっと出来た男な虹村目の前にすると、俺の普段の生活の粗悪さが浮き彫りになって少々恥ずかしい。






「あー・・・今日は学校休んでたよな。風邪、ではなさそうだよな。家の用事とか?」

「まぁ・・・そんなところだ」


相手から訪ねてきたのに、特に話をふってこようとしなかった虹村に俺は今日の事を尋ねた。

が、いつも通り、たったそれだけしか返ってこない。この後に会話が続くのは難しい。


俺は「んー・・・」と頬を掻きつつ、目の前の虹村が俺を訪ねてきた理由を考えた。・・・まぁ、虹村と比べて頭がそれほど良くもない俺には到底理解できないけれども。





虹村は近所を通ったからと言うが、流石に通った程度じゃ俺の家には訪ねて来ないと思う。もしも虹村が、俺の思っている以上に俺に対して友情を感じてくれていたら、ありえるかもしれないが・・・残念なことにそれはなさそうだ。









「・・・俺はお前を信用している」









「えっ」


それは唐突に何の前触れもなく俺の耳に届いた言葉だった。

もちろん俺は、その言葉に驚いた。


仲が良い。そう思っていたのは、自他共に見ても俺だけだというのは明らかだと思っていたからだ。

にもかかわらず、今まさに虹村は俺を信用しているなどと口走っている。



本当に、今日は不思議な日だ。




「・・・そーか。そりゃ良かったよ」

さらっと言った虹村の真似をして、クールに言うつもりだったのに・・・あぁ、駄目だ。口がどうしてもにやけてしまっている。声だって嬉しさが隠せていない。

俺は上機嫌になりながらも「じゃ、何か飲み物でも用意してやるよ」と立ち上がって虹村に背を向けて歩き出そうとする。





「名字」


「ん?何だ、虹村――」

笑顔で振り返ろうとした。



だが、待っていたのはザクリッと背中に何かが突き刺された感覚。


あまりの痛みに驚きながらもなんとか振り返れば、虹村は倒れていく俺を無表情に見下ろしていた。






親友の裏切り




(お前は俺の望むスタンド使いになってくれると・・・信じている)
何故なら彼は、優しい男だから。




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