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イルーゾォは臆病だ。

イルーゾォは引きこもりだ。

イルーゾォは・・・




「おいコラ、このオタク野郎!!!!ソファーの上に漫画置きっぱなしにしてんじゃねぇよ!!!」


「わッ!?お、おいギアッチョ!!!!俺の【君☆ラブメモリー】投げるなよ!!!!!」

「お前の必死の形相がこえぇよ!!!!!」



ギアッチョが投げつけてきた漫画を必死の形相でキャッチしたイルーゾォ。


普段は臆病で引きこもりな彼だが、彼が大好きな漫画やアニメについては話が別だ。




ギアッチョがサッカーの試合を見ようとしたときにアニメが被ればイルーゾォは血眼になってそのテレビを死守するし、漫画をうばわれようものなら問答無用でマンインザミラーされる。

チーム内ではイルーゾォのオタク趣味についてはもうあまり突っ込むまいと決めて入るが、やはり引きはする。






「というか、お前最近そればっかじゃねぇか。そんなに面白いのか、ソレ」


「ソレって言うな!!!!名前ちゃんは俺の嫁ッ!」

「キモッ!!!!」



ひしっと漫画を抱き締めながら叫んだイルーゾォにギアッチョは軽く青ざめる。




「というか名前ちゃんって・・・そりゃ漫画の中のヤツだろっ・・・って!というかソイツ“男”だろ!?」

「あーあー!!!聞こえない聞こえない!!!!名前ちゃんは俺の嫁なんだぁぁぁぁあッ!!!!!」




名前ちゃんというのは、イルーゾォの持っている漫画に登場する“男の子”の名前だ。


此処ではっきり言わせて貰えば、イルーゾォは別に同性愛者ではない。




ただ純然(?)たる『腐男子』なのだ!!!!!!





話としては突如としてモテ期が到来した主人公の友達的ポジション。ちなみに美少年で、主人公曰く『名前が女の子だったら最も理想的な女の子』だそうだ。


日本で連載されているソレを、イルーゾォは毎度わざわざ日本へ飛んで買ってきている。



原作を楽しむために日本語までマスターしてしまう始末だ。

そのやる気を仕事にも出してほしい・・・と頭を抱えているのは我等がリーダーのリゾット・ネエロ(28)だ。




ゲームまで発売されていて、イルーゾォは鏡の世界に籠ってそのゲームをやっている。






「あー・・・二次元いきたい。名前ちゃんのいる世界に行きたい。いや、むしろ名前ちゃんに来てほしい」

ブツブツッと呟いたイルーゾォは「・・・よし、もう一周ゲームしよう」と言いながら鏡の世界へと帰って行った。



「・・・アイツ、頭大丈夫か」

ギアッチョは顔を引き攣らせつつも、ソファーに腰かけて雑誌を読み始めた。

















「――うわぁぁぁぁぁぁぁああああああああああッ!!!!!!!!!」


「あ゛ぁ!?今度は何だよ」



イルーゾォが悲鳴を上げながら鏡から飛び出してきた。




「名前ちゃんがっ!俺の名前ちゃんがぁぁぁぁああッ!!!!!」

ゲームのデータでも飛んだか?と思ったが、ギアッチョは大きく目を見開いて言葉を止めた。





「此処・・・何処?」


イルーゾォが飛び出してきた鏡から、もう一人出て来た。

その子はきょろきょろとあたりを見渡すと、不安そうな顔をして自分たちの方を見る。


イルーゾォは顔を真っ赤にして「名前ちゃんがっ、三次元にっ」と呟いている。



確かに、その姿はギアッチョも以前イルーゾォが読んでいる漫画の表紙で見たことのある青年そのままである。





「あー、すみません。何か気付いたら此処にいて・・・そこのお兄さんに声かけたんですけど、何か悲鳴あげて逃げられちゃって・・・」


「・・・・・・」



敵のスタンドか?と思いながらスタンドを出そうとするギアッチョをイルーゾォが無言で殴る。




「ってぇなぁッ!!!!何すんだよ!!!!!」

「名前ちゃんにスタンドを向けるヤツがあるかぁ!!!!!」


「ぁー・・・お兄さん、あのさ・・・僕の事『名前ちゃん』って呼ぶの止めてくんないかな・・・?」


「お兄さんっ・・・!」

イルーゾォは名前にそう呼ばれて何やらときめいたらしく、顔を赤く染めた。



名前は困ったような顔で「此処、本当に何処なんですかぁ?」と今度はギアッチョに問いかける。




「・・・手前、敵のスタンド使いじゃねぇのか」

「すたんど・・・ぁー、何ですかソレ」


しらばっくれている風でもない。



イルーゾォはそわそわした様子で名前を見て、ギアッチョの後ろに隠れながら「お、俺イルーゾォ」と自分の名前を言った。



「イルーゾォ?ぁー、じゃぁイルーゾォさん」

「イルーゾォで良い」


「・・・イルーゾォ」


「あぁ!」



嬉しそうな顔で頷くイルーゾォにギアッチョは苛立ちを覚えた。


下手をすれば侵入者かもしれないのに、何故こんなに喜んでいるのか!





「ぁー・・・出来れば此処が何処か教えてくれませんか?すぐに佐藤のとこに行かなくちゃ・・・アイツ、一人じゃすぐ女共のせいで厄介ごとに巻き込まれるし・・・」

「〜〜〜っ、流石は名前ちゃんだっ!!!主人公のところに突如現れた未来人とも互角に渡り合うだけはある!」


「ちょっ、アズサちゃんの知り合い?じゃぁさっさとボクを元の場所に戻してくださいよ」

相変わらずの困り顔でイルーゾォへと近づく名前。


あわわっ!と逃げようとするイルーゾォの腕を瞬時に掴み「捕まえた」と笑った。




その笑顔がドストライクだったのか、イルーゾォは気絶寸前だ。






「名前ちゃん・・・」

「いやいや、だから名前ちゃんはよしてくださいって・・・あ、イルーゾォって結構綺麗な顔してますね」


「〜〜〜っ、おおおおお、お世辞は許可しないぃっ!」

「お世辞じゃないので許可通りましたね」


してやったり、という風な顔をした名前は真っ赤な顔をしたイルーゾォの頬をするりと撫でた。





「不公平です。貴方は僕のことを知っている風なのに、僕は貴方のことを全然知らない・・・貴方をもっと、教えてくれますか?」

「っ、ぇ、と・・・名前ちゃん、俺っ・・・」


気付けば名前のもう片方の手はイルーゾォの腰へと回されている。



「・・・可愛い」

「ひっ!?」


耳元で囁かれたイルーゾォは腰が抜けたのか、名前の方へと倒れた。


名前はそれを軽く受け止め小さく微笑む。





「じゃ、早く帰してください」

「・・・む、無理」


「え?」


「お、俺、どうして名前ちゃんが此処にいるのか知らないし・・・そもそも、名前ちゃんは二次元の子で・・・」



しどろもどろになりながら説明するイルーゾォに、名前は困ったような顔をした。






「僕が二次元の子って・・・僕にとっては僕はガッツリ三次元のつもりなんだけど・・・んー、帰り方がわからないのは困ったなぁ」


イルーゾォを軽く抱いたまま、名前は考える素振りを見せ「あ」と言った。





「じゃぁ、しばらくはイルーゾォのところでお世話になります」

「ぇっ!?」


「駄目ですか?」



「〜〜〜っ、ぜ、全然OKっす」

大好きなキャラのお願いを断れるわけがなく、イルーゾォはこくこくっと頷いた。




「まぁ、何がともあれ、臨機応変に頑張らないといけませんね。イルーゾォ、これからよろしく」

「よっ、よろし、く・・・」



半ば強引に決められたが、此処で忘れてはいけないことが一つ。






「・・・おい、さっきから俺を無視するなんて、良い度胸じゃねぇか」


青筋を浮かべ、ギャングを全面に押し出したような恐ろしい形相をしたギアッチョが、今にもスタンドを出そうとしていた。



殺気を向けられつつも全く意に反した様子もなく、名前はギアッチョの方を見る。






「ん?あぁ、眼鏡の人もいましたね。どちら様で?」

「うっせぇ!!!!!話しかけてくんな!!!!!」


「・・・わぁ、イルーゾォに比べて親しみにくーい」



僕、この人苦手ー、と言いながら笑う名前にギアッチョがブチッとキレるのをイルーゾォは肌で感じた。

が・・・




「お、俺にはどんどん話しかけてくれっ」

今はギアッチョに構っていいる余裕はないのか、次の瞬間には名前だけを視界に収めた。


一方の名前は頬を高揚させて言うイルーゾォに「もちろん」と笑いながら頭を撫でた。





「だから無視すんなぁぁぁああああああああ!!!!!!!」


あまり親しげに話しかけて欲しくはないが無視されるのはそれはそれで嫌なギアッチョの怒声が響いた。




二次元からコンニチハ




あとがき

腐男子なイルーゾォ・・・。←
何故だかわかりませんが、イルーゾォはオタクだったり腐男子だったりするイメージがあります。

デフォルト名:瑞貴(通称:瑞貴ちゃん)
イルーゾォお気に入りの『君☆ラブメモリー』という漫画の主人公の友達ポジション。
ゲーム化やアニメ化をされているため、割と人気と思われる。
内容は結構ベタで、主人公が美少女(幼馴染や先輩後輩、宇宙人や未来人・・・何でもござれ)から滅茶苦茶モテる話。




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