「不思議な話だ・・・」
「何がだ」
男が星空を見上げた。
星というやつにあまり良い思い出はないDIOは、星の代わりに彼を見る。
「あのまま牢獄で一生を終えると思っていた私が、まさかこの広い空の下で呼吸を出来るとはな」
「このDIOに感謝することだ」
「あぁ、感謝しているよ」
さらっとそういったナマエに、DIOは少しだけ黙る。
ナマエは少し前まで囚人だった。
スタンド使いで、能力は“生存”という・・・
「もし私にスタンドが発現していなかったら、私は死刑でとっくにお陀仏していただろうに」
「死にたかったのか?」
「死にたい・・・と言ったら嘘になるが、私はこのまま死ねないのだと思うと、少しだけ微妙な気持ちになる」
彼のスタンドは“生存させる”ことが出来る。
特に攻撃も防御も出来ないそのスタンドがまるでそれと引き換えの如く特化している能力は、誰もが羨む能力だった。
吸血鬼でもない彼は若い男性の姿から一切歳を取らず、致命傷も負わず、病気にもかからない。
それは全てスタンドの能力で、しかしこの能力は万能なわけではない。
彼は生かそうと思った相手を生かせるが・・・――自分の生死は自分で選べない。
彼のスタンドは彼の意思など関係なしに彼を生かし続けている。
自分の死に方がわからない彼は、あの薄暗い牢獄の中で眠り続けているはずだった。
そんな中現れたDIOはナマエに興味を持ち、ナマエを連れ帰った。
自分と同じで不老不死のナマエのことは、何時しかそれなくしてはありえないというように、気に入っていた。
「このDIOと共に生きるのは嫌とでも言うのか?」
不機嫌そうな声を上げるDIOに、ナマエは小さく微笑みながら首を振る。
「いいや。DIOの傍なら、別に生きてても良いなと思う」
「・・・ほぉ?」
「もしDIOと出会えず、それでも生きていたら・・・私はきっと、生きた死体になっていたことだろう」
呼吸をする死体。
何も考えず、何も見ない、何も言わない・・・そんな、まるで死体のようになっていただろうと、ナマエは穏やかな笑みを浮かべたまま言った。
「DIOと出会えてよかった」
「・・・まるでプロポーズのようだな」
「もしプロポーズなら、受け入れてくれるかい?」
くすりと笑うナマエに、DIOはニヤッと笑った。
「このDIOに忠誠を誓うなら、それも良いだろう」
「おや、随分我が儘な奥様になりそうだ」
楽しげな声と共にDIOをそっと抱き寄せ、その唇に口付ける。
何度かついばむようなキスをした後、その耳元にそっと唇を寄せた。
「この命続く限り・・・いいや、この命尽きても私は君の傍にいるよ、DIO。君が嫌だと言っても離れない。私は私の愛のために君に尽くして尽くして生き続けてみせよう」
「ふんっ。随分と情熱的なプロポーズじゃないか」
「DIOは嫌かい?」
「いいや。・・・最高だ」
お互いにお互いを抱き締めながら、二人は楽しげな笑い声を上げた。