「こら待て承子!!!!!」
セーラー服の上に学ランを羽織って、更には学生帽を被った空条承子は、その声に立ち止まった。
綺麗な黒髪とそのスタイルの良さもさることながら、学生帽から除く綺麗な瞳が特徴的な整った顔はもはや芸術である。
「承子!お前また俺の学ランを勝手に・・・!」
カッターシャツ一枚な青年は腰に手を当てて「返しなさい!」と承子に向けて言った。
「・・・うっせぇ」
「女の子がそんな言葉を使うんじゃありません!まったく・・・お兄ちゃん悲しいぞ。何処の世界に兄より男らしい妹がいるんだ」
すたすたと承子に近づいて行って学ランを奪い取ろうとする兄、空条名前の手を叩き落とす。
「いってぇ!?馬鹿!兄に手を上げるとか何事だよ!」
「うっとおしいぜ」
「言葉遣い!」
「・・・・・・」
途端にむすっとした表情になる承子の頭からひょいっと帽子を取った名前は「まったく・・・」とため息を吐く。
「折角母さん譲りの可愛い顔してんだ。帽子なんかで隠すなよな」
「・・・マザコン」
「母思いと言え・・・ってオイ!」
承子は名前の手にある帽子をバッ!!!と奪うと、その帽子をぎゅっと抱きしめた。
「・・・お前、そんなに帽子が好きなのか」
「・・・・・・」
ふるっと承子が首を振る。
「はぁ?じゃぁ何で何時も俺の帽子と学ランを勝手に・・・」
「・・・――」
「あ?聞こえないぞ、承子」
「・・・兄貴のだから」
「・・・は?」
「帽子と学ラン、身に着けてると・・・兄貴に包まれてるみたい、だろ?」
「〜〜〜ッ!?」
カァッ!!!!と名前が赤くなって固まっているうちに、承子は「あばよ、兄貴」と言いながらさっさと言ってしまった。
「・・・ハッ!!!まさかアイツ、俺を放心させるために言ったのか!あのアマ〜!!!」
名前は赤い顔のままそう叫ぶと「母さん!!!予備の学ラン何処仕舞ってたっけ!?」と言いながら家の中へ駆け戻って行った。
「・・・・・・」
一人通学路を歩く承子は・・・
「・・・やれやれ、だわ」
小さくそうつぶやいてから、きゅっと学ランの袖に顔を押し付けた。
ちらりと見えた耳は・・・真っ赤に染まっていた。