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ソイツと出会ったのは突然だった。


DIOを倒し、日本へ帰ってきた後・・・

DIOが亡き後の館の中を調査していた時、地下室に一つの空の棺があった。



しかし、俺達が見つけた吸血鬼はDIOとヌケサクのみ。他は見つけていない。


ヌケサクのものだったのか、それとも違うのか。




一つわかることといえば、その棺の内側には一つ、小さく【Jonathan】と掘られていたということだけだった。













「ジョナサンの玄孫か」




真夜中の出来事だった。

俺の家の前に居た男は俺に向かって言った。


開いた口の中に鋭い牙が見え、俺はスタープラチナを出現させる。




「綺麗な目だ」

俺の動きは止まる。


男は特に攻撃するでもなく、酷く愛おしそうな目で俺を見つめ、言った。




カツンッと、男の履いている靴が静かなその場に音を鳴らす。





「けどジョナサンの方がもっと綺麗な目だった」


はっきりとした声。

真っ直ぐとした目。



「手前は・・・誰だ」

「綺麗な声だ」


俺の言葉なんてまったく聞かず、男はただただ言葉を述べる。



こちらに手を伸ばしてきた男に、俺は抵抗できずにいた。





「けどジョナサンの方がもっと綺麗な声だった」

悲しそうな目をしながらそういったソイツは、俺の服をギュッと掴みながらずるずるとその場に座り込むと、ふるふるっと肩を震わせた。




「ジョナサンっ、じょな、さん・・・」


ポタッと落ちたのはソイツの涙・・・




「ジョナサンはその心も体も清らかだった」







「アンタは・・・ジョナサン・ジョースターの何だったんだ」

「・・・親友だよ。尤も、DIOがジョナサンを動揺させるために私を吸血鬼にしてしまってからは、敵だったけど」


悲しげな眼をしたソイツは「ただ見ていることしかできなかった」と言う。



「ジョナサンを救いたかった。けど、出来なかった。ジョナサンとDIOの首が入れ替わった瞬間から、私の世界は真っ暗だった・・・太陽が消えてしまったようだった。・・・ははっ、太陽の下に出られない身なのに、太陽が消えたなど可笑しいか・・・」


無理に笑う声。


それは酷く人間臭く、座り込んでいるソイツに、俺は自然と手が伸びた。



ふんわりとした亜麻色の髪に手を置く。

するとソイツが動きを止め、しばらくしてゆっくりと俺を見上げた。






「・・・君は、ジョナサンに似ているな・・・」


ふっと笑ったソイツは、音もなく立ち上がり、するっと俺の背に腕を回し・・・ギュッと抱き締めた。

締め付けるわけでもなく、ただ触れるだけの様な抱擁。


まるで俺が壊れるのを恐れるような・・・







「・・・DIOの館の地下にあった棺の持ち主か」

抵抗することも忘れ、俺は問いかける。




「あぁ」

「DIOの仲間じゃねぇのか」


「DIOと約束したんだ・・・天国に至れば、ジョナサンの身体を返してくれると」


あまり理解はできなかったが、ソイツは酷く落胆したような声で「けど、その約束は果たされなかった」と言った。





「ジョナサンの血族に手は出したくない。だから、館を離れていた。けど、帰ってきたらDIOはすでに息絶えていた」


するりと、ソイツのひんやりとした手が俺の頬を撫で、ソイツは小さく・・・苦笑のような笑みを浮かべた。






「まさか、ジョナサンの復活を、ジョナサンの孫たちが阻止するとは、驚きだった」

「別にアンタの邪魔をしたわけじゃねぇ」


「わかってる。・・・きっと、ジョナサンもこの世界への復活を望んでいなかったんだ。望んでいないことをするなんて無粋な話だな・・・きっと、ジョナサンは天国でエリナと幸せに暮らしていることだろう」



涙を流しながら笑ったソイツに「吸血鬼でも涙を流すんだな」と言った。


するとソイツは「ジョナサンの玄孫に恥ずかしいところを見せてしまった」と手で涙を拭った。

その様子に邪悪さなど一切なく、ただただ綺麗だと思った。







「・・・最後に、ジョナサンの孫たちに会いたかったんだ」

「・・・最後?」


「私がいれば、きっと迷惑になる。私は、世の理を壊しているのだから」




「・・・・・・」

「会えてよかった。承太郎」


優しい微笑み。




その微笑みのまま、最後に少しだけ強く抱きしめ、離れて行こうとするソイツ。





「・・・承太郎?」

俺は、何故かソイツを引き留めていた。




「次は何時来る」

「・・・承太郎、私はもう逝くんだ」


「次は何時来るか聞いてんだ」




「・・・そんな風に言われると、引き留められている気がしてしまう」


ソイツは困ったように笑いながら「次は・・・」と呟く。







「ジョースター卿にエリナ・・・ジョナサンと親しかった人たちの墓参りに行こうと思ってる。それが終ったら・・・きっと」

「・・・わかった」


何故こんな約束をしたのかはわからねぇが・・・




もしかすると、俺はもう一度コイツに会いたかったのかもしれない。


















「承太郎」


その数年後、何処か晴れやかな顔をしたソイツが再び俺の元に現れた時、俺はたまらずソイツを引き寄せ、抱き締めていた。




我が愛しき親友の子孫よ







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