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僕には好きな人がいる。


僕は好きな人のことを沢山知りたい。

だから僕は、その人の家を何時も見ている。



その人は普段どんなものを使ってるのか知りたくて、捨てられていたゴミ袋の中を見てしまう。


その人のところにはどんな手紙が届くのか気になって、郵便受けの中も見てしまう。


その人の傍にいたくて、後を付けてしまう。





・・・こういうのって、ストーカーって言うんだよね。


いけないことだってわかっているのに、どうしてこんなことをしてしまうんだろう。

気になって気になって仕方なくて・・・






気になるうちにその人が好きになった。






「露伴さん・・・」


あぁ、僕はなんて悪いヤツなんだ。


今日はついに盗撮までしてしまった。

もう何百枚も家にある。見てるだけで嬉しくなる。



きっと僕は変態なんだ。どうしようもない、下種なんだ。


そんな自分に何度も失望してしまう。なのにストーカー行為が止まってくれない。





露伴さんは今何をしているんだろう。


気になって、僕は耳に付けているイヤホンに耳を傾ける。




《ザザッ――康一君、今日は――ザザッ――》

あぁ、お友達の康一君が来ているみたい。



・・・僕、何時の間に盗聴器なんてセットしてたんだろう。あぁ、怖い怖い。

何時の間にか僕のポケットには合鍵まである。明らかに勝手に作ったものだ。



そのほかにも、露伴さんのものだと思われるハンカチやらペンやらが僕の家にはある。

怖いけど、止められない・・・





「・・・ごめんなさい、露伴さん」


涙がこぼれそうになるぐらい申し訳ないのに、僕の脚はそっと中がうかがえる場所まで歩いていく。




どうやら康一君にお茶でも淹れて上げているのだろう。キッチンにいる露伴さんを僕はじっと見つめた。

露伴さんは綺麗な人だ。ストーカーをする僕なんかよりもずっと・・・





僕は何でこうも変わってしまったのだろう。


少し前までは、公園で野良猫と戯れることだけが趣味だった。最近は猫と戯れていない・・・



だって露伴さんが気になって仕方ないんだ。



僕は露伴さんのことが好きだけど・・・

露伴さんはきっと、こんな僕嫌いになる。


そう思うと悲しくて辛くて、申し訳なくて・・・






「ッ・・・」


気付けば、堪え切れなくなった涙が零れていた。











バタンッ!!!!!


「ぇ・・・?」


突然扉が開け放たれる音がした。

キッチンから外まで走ってきたのか、そこには息を切らせた露伴さんが・・・


あぁ、そんな・・・見つかってしまった・・・





こちらをじっと見つめている露伴さんに言える言い訳なんて持ち合わせてはいない僕は、観念したように下を向いた。

嫌われてしまう。いや、それどころか軽蔑されてしまうだろう。




「露伴さんっ、ごめんなさいッ・・・好き、好きですっ」


僕は懺悔するような弱弱しい声で告白をした。



するとどうだろう。

露伴さんは「好き?僕のことが?」と驚いたような声を上げ、僕に一歩近づいてきた。



「っ!」


「本当か?」



今にも逃げ出しそうになる僕の腕を掴み、そういう露伴さん。




「ほ、本当・・・です」


そう返事をした瞬間、僕の胸にドッと何かが当たった。

それが露伴さんの頭だと気づくのに、そう時間はかからなくて・・・僕は困惑した。










「・・・嬉しいよ」








「ぇっ、だ、だって僕はッ・・・貴方を、ストーカーして・・・」

「あぁ、そうだ。けど、嬉しい」


嬉しいなんてそんなまさか・・・


困惑するしかない僕に、露伴さんは小さく笑顔を見せた。





あぁ、これだ。

僕が一番気になっていたのは。



最初は、露伴さんという人間が気になって気になって仕方なかった。


けど好きになってからは、露伴さんはどんな風に笑うんだろう。どんな風に・・・それが気になっていたから・・・



僕は露伴さんが笑ってくれたことが嬉しくて、その身体をそっと抱き締めた。


腕の中の露伴さんがまた笑った。






「好き、ということは、僕と付き合いたいと言うことだろう?」

「ぇっ?ぁ・・・うん。そうなるの、かな?」



「何故疑問形なんだ」


「だって・・・まさか、ストーカーの僕を受け入れてくれるなんて思ってなくて・・・もっと、罵られても仕方ないって思ってたから」


へにゃっと眉を下げる僕に、露伴さんは笑いながら「僕が君を罵るわけないだろう」と言った。

その言葉が嬉しくて、また僕は彼を強く抱きしめた。










その数分後、突然家を飛び出した露伴さんを追いかけてきた康一君が「ぇ・・・」という顔で僕と露伴さんを見てしまって、僕は大分慌てた。


ちなみに露伴さんはまったく気にせずに僕の胸に顔を寄せていて、とっても恥ずかしかった。



おまけ(露伴SIDE)



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