「あれ、丸井は?今日の朝練にもいなかったけど」
「…」
「ん、仁王なんか知ってるの?」
「…体調悪いとか何とか」
「?…ふーん」

 丸井は朝の一件後、校舎の方へ走り去ってしまい朝練には出なかった。放課後の部活にも来ていないようだ。よっぽどショックだったらしい。


 休憩時間になった。柳が近くまでやってきたので、俺は柳には話しておこうと朝の話をした。



「丸井が言うには、俺と柳を足して2で割るとみょうじになるらしいナリ」
「…」
「意味わからんか?」
「…だいたい、わかる。……丸井が今日休んでいる理由も」
「さっすが参謀」


 ちら、とフェンスの外を見るとみょうじもこちらを見ていた。大きく振られた手に、こちらも小さくではあるが同じように手を振り返す。柳は小さく笑う。ふと、思った。


「…いくら口癖でも」
「?」
「みょうじは丸井に謝らんといけんと思う」
「…」
「後で俺、言ってみるけえ」
「…」
「…柳?」

 柳が黙り込んでしまった。何事かと思い眉間にしわを寄せると、ぽつり、「良かった」と言った。…良かった?




「なまえが、仁王みたいなやつに好きになってもらえて良かった」
「へ」
「お前ならなまえを任せられる」



 あいつは幸せだな、と笑った柳があまりにも父親っぽくて「じゃあありがたく貰うの、」なんて言えば「馬鹿か」と目を開かれた。



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