柳の彼女なのか?そう尋ねて返ってきたのは同じ疑問符。なんで?、そんなことを言われても。ただちょっと気になっただけだ。特に理由もない。かなりの確率で彼女だってことは分かってるし、ただ柳の彼女という少しばかり珍しいやつと話してみたかっただけで…


「ね、なんで?」
「えっと…その、じゃな」
「そのへんにしておけなまえ」
「あっ蓮二、お疲れさま」

 柳が現れた途端にそいつはにっこり笑った。とりあえず助かった、のか?「ねえ蓮二、この人がね私のこと蓮二の彼女なのかーだって。なんで?」「俺となまえが付き合っていると誤解しているからじゃないか」「えー!!」


「…え?」
「……え?」
「………ふむ」


 俺、彼女、柳。順番に首を傾げる。俺は彼女の「なんで?」に対する答えがそんな単純なもので良かったことと柳と彼女の関係が誤解であるということに驚き、え?と呟いた。おそらく彼女は俺の呟きの理由が分からなかったので「え?」。一連を理解しているであろう柳が「ふむ」と言った。




「俺となまえは幼馴染だ」
「…そう、なんか」
「ちなみになまえのなんで?は口癖みたいなものだ」
「…はあ」

 柳の説明を受け、ちらっと彼女に視線をやると彼女は俺のことをじっと見ていた。




「……なん?」
「なんで、えっと…」
「仁王」
「あ、仁王くんっていうの。仁王くんの髪はなんで銀色なの?」


 特に、理由はない。答えが単純でいいとは言っても、彼女の「なんで?」はどこか真剣な気がした。困って柳の方を見ると、柳は小さく頷いた。



「銀色が好きだからだそうだ」
「…え」
「間違ってはいないだろう」
「お、おう」
「そっかそっか、仁王くんは銀色が好きなんだ」
「あ、…青も好きじゃ」
「青?私も一番好きな色だなあ!」


 彼女が満面の笑みを見せる。横で柳も笑っていた。その雰囲気といったら温かくて、穏やかで。「なんで?」「それはな、」そんなやり取りがこの二人には十数年続いてきたのかと考えると、なんだかこちらも幸せになった。


「なんかええなあ幼馴染」
「仁王くんはいないの?」
「俺は引っ越してきとるからのう」
「じゃあ私と幼馴染になろうか?」
「…」
「あれっなんで黙るの?ね、なんで?」
「…プリッ」



 あとに柳が「幼馴染はなろうと思ってなれるものではないだろう」と言うまでしばらく彼女の「なんで?」は続いた。けど何度も聞く疑問詞は、呆れることはなく不思議と心地の良いものだった。


「ていうかなんでプリッって言うの?」
「うーん…」




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