昼休み、学年の掲示板に英語の補習者の名前にチェックが付いた名簿が貼り出された。私は今回は頑張ったので高得点をたたき出してチェックを受けていない。そして他のクラスの分も見ると、驚きの事実。


「切原が補習じゃ、ない…」


 名簿の前に人だかりが出来ていて、誰かは分からなかったけどその中の一人が確かにそう言った。私も、その名前を探し出して視線を横にずらす。あの赤也に、チェックが付いていない。
 赤点回避できちゃったりして、そう言った赤也の顔が思い出される。言ってたことを本当にしちゃうあたり、すごくすごく尊敬した。おめでとって言いたいけど、今は話しかけることが出来ない。人だかりからそっと抜け出す。わいわいとした声たちから遠ざかるほどに何だか無性に泣きたくなって、私はいつまで待てばいいのかなあなんて。


「…つらいよ、赤也、寂しいよ」

 置かれた距離、その延長線上にあるものは二人をいずれ引き離してしまうものだと知っている。私がどんなにどんなに好きでも、赤也の気持ち次第でそれはイチにもなるしゼロにもなるから。それがイチに傾けば本望だけど、赤也はきっとゼロの答えを出すだろうから。自然消滅、かな。面と向かって別れ話、かな。
 どっちにしろ悲しいや、そんな自嘲をして、笑ってみた。




 その直後に、私がさっきまでいた人だかりの近くから声が聞こえた。「あっ切原!お前補習ねえぞ」「おー知ってるー!」「知ってるってお前、」「悪いな俺いま急いでっから!」
 パタパタと赤也の忙しそうな足音が聞こえる。パタパタ、パタ。私のすぐ後ろの方で、それは止まった。

「なまえ!」

 私を呼ぶことは予想外だった。驚きを隠せずにぎこちなく振り返れば、息を上げた赤也が「来て!」と一言、私の手を掴んで走り出した。




行き先はどこ(幸せ、だったらいいなんて)






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