カチカチと自分の誕生日を祝うメールへの返信を打ち続けてなかなか俺のことを構ってくれない彼女の背中に抱きついてみた。なあにブン太?と俺のほうを向いて笑ってくれた彼女に安心して、そのままぎゅうっとしてみる。なんとなく幸せになった…んだけど、そのとき偶然見えてしまった彼女の作るメールの文面に、俺はショックを隠せなくなった。 「お前友達にはハートマークいれんの…!?」 「え、うん」 「俺には送ってくれないじゃん!」 「…」 彼女は顔をしかめた。すぐあとに、何そんなこと気にしてるのと呆れたような声色で言った。そんなこと、じゃない。そうだ、思えばこの世の中は最近どうもおかしかったんだ。女の子同士で平気でハグしちゃったりしてるし、バレンタインだってそう女の子同士で交換したりしてる。それを男子は端からみることしかできないって絶対ヘン。いや、俺にはこいつがいるし、女の子同士っても恋愛とかそういうんじゃないってわかるからいいんだけど、でもやっぱり最近おかしい。 「だから、お前のハートマークは俺のためにあるって言っても過言じゃないわけ」 「…いや過言だと思うんだけど」 苦笑い気味に言った彼女は、でも、と続けた。 「世の中おかしくないと思うよ」 「なんで?」 「私が今日ここにいるから」 彼女のその言い回しはよくわからなかった。返事をしない俺が、よくわかっていないのを感じたらしい彼女は、だーかーらー!と人差し指を立てた後に、じいっと俺のことを見て言った。 「自分の誕生日を一番祝って欲しいのは、やっぱりブン太なんだよ」 それが嬉しくて照れくさくてどうしようもなかった。何も言えなくなった俺に向かって彼女が、「えーブン太が照れてるかわいい!」とかなんとかいうからますます俺はどうしようもなかった。 「〜っ、ケーキ作ってあるから持ってくる…」 「えっ本当?ブン太の手作り嬉しい!」 「おう、待ってろい」 小さめのホールケーキとジュースを持って、彼女がいる俺の部屋へ戻る。すると、彼女が「ねえブン太の携帯光ってたよ、メールじゃない?」と教えてくれた。ケーキとジュースをおいて、うわあ美味しそう!と言ってる彼女の横で携帯を開くと、差出人の名前のところには、彼女の名前があった。 「?」 「ねえブン太早くー!」 「いや、お前…」 「ブン太、今日はありがとう」 隣にいる彼女が急に呟いた言葉と同じ文章が、俺の手元には浮かんでいた。しかも俺の手元にある方の最後には、俺のためにあると言っても過言ではないあのマークが、そこに、確かにあって、やっぱり俺はどうしようもなくなるのだった。 ▽ ニアちゃんお誕生日おめでとう!@0402 |