十話

「……傑、女に詫び入れたいとき、どうしてる?」
「彼女が怪我したっていう今日の任務?……悟がなにかやったの?」
任務が終わり、少女の治療は終わった。
速攻で目を覚ました彼女はすぐさま報告書を出して、すでに部屋に戻っているらしい。
報告書には彼女が油断して怪我をしたところ、五条が呪霊を祓ったといった内容が書かれている。

五条は先に出された報告書に納得がいかなかったが、ハンコももらって受理されてしまった。
夏油の部屋でゲームをしながら五条はぶすくれている。

「俺が蹴ったらあいつが武器落として……そのまま呪霊に食われた。」
「……4級でしょ?彼女ならその程度何とかしそうなものだけど。」
渋い顔をする五条に夏油はまだ何かあるな、と感じたが一旦置いておいた。

「まあ、とりあえずお詫びか。確か彼女ケーキは好きみたいだよ。」
「はあ?なんで知ってんの?ってか食うの?」
「いや、お茶したから。悟に言われるまでは電話する友達みたいな感じだったし。」
そういやそうだ、と思い出した。
五条は彼女がケーキを食べているイメージがなかった。

「超ちびちびめちゃくちゃ大事そうに食べてた。」
「小学生かよ。」
笑う五条に対し、夏油はあまり笑っていなかった。

「実際持ち物小学生だよね。灰原が、彼女が年季の入った子供用のはさみとアラ〇ックヤマト使ってて懐かしかったって言ってた。家庭的にかなり節制を強いられてきてんじゃないかな。わかんないけど。」
「でももうすぐ高専の給料入んだろ。」
「……まあそうだけど、お金が急に入ってきて使い方わかるのかなって思う。」
五条は目の前で今やっているゲームすらしたことないのかもしれないなあ、と思った。

「今呼んでいい?」
「え、私の部屋?」
「桃〇とスマ○ラでボコボコにしてやる。」
にやにやしながら笑う五条にため息をつく夏油は好きにしろと言わんばかりに机の飲み物を飲んだ。



「頭おかしいんじゃねえのお前!!!」
「つっよ!!!!本当に初めて!?!?」
「あはははは、ゲーム初めてやりました!!」
横でカコカコとコントロールを操作する彼女は赤い顔でにこにこしている。
画面上の彼女のキャラクターは夏油のキャラクターをKOしている。
五条のキャラクターはすでに画面上にいない。

「あーくっそ負けた。お前ボコボコにしてやろうと思ったのになんだこれ。」
桃鉄はそんなにうまくなかった。
ルールを覚えるのに必死で五条にキング〇ンビーを擦り付けられてずっと口が開いたままだったし、最下位だった。

「体を使うタイミングゲーは得意なのかもしれないね。」
「運ゲーじゃ意味ねえしな〜クソ。」
夏油が彼女を見ると、顔が赤い。

「……え、顔真っ赤だけど大丈夫?」
「うっわ、マジじゃんやば。」
それを聞き、彼女は自分の顔をぺたぺたと触りだす。

「楽しくてびっくりしました。多分興奮しすぎて熱出ましたあ。」
「はあ?ガキか!!!!!さっさと部屋帰れ!!!!」
彼女の首根っこつかんで部屋から出そうとする。
確かに首元が熱い。
しかし彼女がドアの枠に足をかけて出ようとしない。

「いやですーーー!!!まだやります!!!!夏油さんまだいいですよね!!」
「今日怪我したんでしょ?安静にすべきだとは思うけど。」
「ほらかーえーれ!!!」
「やだああー!!!!!!!!」
珍しく駄々っ子をこねる彼女に驚きつつ、五条は彼女を押す。



「うるさいよ、何やってんの?」
家入が部屋の前にいる。
後ろにはビニール袋を持った灰原と七海もいる。

「あ、ここにいたんだ!今日怪我したんでしょ?お見舞い用にシュークリームいっぱい買ったから食べよ!」
灰原が顔が真っ赤なままできょとんとした彼女に袋を渡す。
中には複数何かが入っているように見える。
恐らくここにいる人数分のシュークリームがあるのだろう。

「……顔真っ赤ですよ、大丈夫ですか。」
七海が心配そうにのぞいている。
「あ、ありがとう、ございます。興奮しているだけなので。」
と言って彼女はするりと五条の腕を抜けてゲームのコントローラーの前に座る。

「お前部屋戻れ!!!熱出てんだろ!!!」
「夏油さんこれ分けてあげるで、もう少しやらせてください。」
「交渉成立。」
「傑!!!!!!!!」
少女が袋の中のシュークリームを夏油の手に乗せる。

「3人も入ってきなよ、彼女スマ〇ラ超強いんだ。」
そのまま夏油の部屋で続きをすることして、3人も部屋に入ってきた。
シュークリームは全員に配られた。



七海のキャラクターが五条のキャラクターにボコボコにされているのを見て灰原が笑っている。
復活した灰原のキャラクターもまたボコボコにされていて夏油と家入はそれを見ながらシュークリームをほおばっている。
五条がちらりと彼女を見るとちびちびとシューの部分を食べていた。
クリームにたどり着いたらしく目をまんまるにして必死に食べている。
夏油が言ったのは本当のようで、大事そうに食べ進める。

ふと、いたずらを思いついた。

にやにやしながら彼女の腕を引き、シュークリームを横から奪い、大口を開けて食べた。
彼女はもぐもぐと咀嚼する五条を唖然としながら見て、食べられたシュークリームを見た。
「バーカ。」

目の前のシュークリームは半分もない。
少女は混乱で口があきっぱなしだ。
そしてじわじわと目から涙がこぼれ、そして口火を切ったように泣き声を上げる。



「うわああああああああんんん!!!!!!!」
「うるせっ!!」

全員が驚いて彼女を見た。

「悟何やった!!!」
「は?いや、シュークリームちょこーっと食っただけ!!!」
「はあ?!?!?」
唖然とした。
いつも冷静で優等生な生徒の模範です!というようなイメージの彼女がたかがシュークリームを食べられたからとガチ泣きしている。

隣で顔を真っ赤にして泣いている彼女に狼狽えながらまだ食べていない自分のシュークリームを押し付ける。
「悪かったって!!俺のやるから!!」
「うわあああああああ!!!」
「ああああああうるせええええええ!!!」

「お前が悪い!!!!!」
と家入と夏油が二人して五条に怒鳴るが少女が泣き止まない。

後ろを振り向き灰原が少女をあやす様に背中をさする。
「ほら、五条さんがくれたシュークリーム食べよう?」
七海が五条のシュークリームを開け、手でちぎって口に入れた。
すると泣き止んだ。

七海がまたちぎって口に入れる。
すると少女はもぐもぐと黙って食べだした。

「マジでガキか、頭おかしいんじゃねえのかこいつ。」
「謝っとけ。」
「謝りなさい。」
睨みつける二人になにも言えなくなった。

「…………ごめん。」
ちゃんと向き直って彼女に頭を下げる。
自分は何をやっているんだとも思ったが、全員が空気的に許してくれなさそうである。

「……うっ。」
「な、なんだよ!」
「……急に冷静になりました。なんで私泣いてるんですかねえ。めっちゃくちゃ悲しくてびっくりしました。恥ずかしい……。」
袖口で涙をぬぐいながらひくひくと肩を揺らす。

「いや本当にヤバいよ。」
「だって、こんなおいしいの初めて食べたんだもん。おいしかったんだもん。うええ。」
そういって、ぼろぼろまた泣き出した。

「あああああ泣くな泣くなもっとおいしいやつ買ってやるから!!!」
最強の呪術師とその呪術師に勝った優等生の彼女がわあわあとやっているのを見て、4人は笑った。



後日お高めのシュークリームを夜に食べさせたが、彼女が先日より必死に食べるのを見て五条はガチで引いた。


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