「おかしいですよね」
「めっちゃおかしいさー」
「矛盾してますよね」
「有り得ないさー」


さっきからぶつぶつぶつぶつ五月蝿い白とオレンジ。HRが終わってお昼休みになって、やっとこご飯にありつけたっていうのに、もう暗いしねちこいしうっといしまじ何なんだ。ああもう今日折角お弁当オムライスなのにテンションが目の前の二人のお陰でだだ下がりしている。はあ。


「絶対おかし「嗚呼もうごちゃごちゃ五月蝿いっつの!そんなん言ったってしょうがないじゃんもう高3なんだしさあ、明日から授業でも我慢するの!」


箸とパンを握り締めたままあたしを見て固まる白とオレンジ。信じられないといった表情であたしを見つめる。そして同じタイミングで溜息をついた。なによ、文句あるの。


「……いやあ、流石ですね」
「めちゃ空気読めてないっつーか、なんつーか」
「え、ちょ、何、あたし受験生として真っ当な事言っただけじゃんか!え、なにこの空気!」


そう言えばまた二人で顔を見合わせて大きな溜息をつく。違いますよ別に明日から授業が始まることを言ってるんじゃありません、と半ばいらいらした口調で言葉を紡ぐアレン。じゃあ何なのさ、ときけばアレンは心底馬鹿にしたような表情でもういいです、と言葉を切った。なにそれ、とアレンの足を踏みつつ言えば、更に恐ろしい力で踏み返された。いって!


「ちょっと乙女の足に何かましてくれてんのよ」
「…………」
「え、シカト?」


もぐもぐとそれぞれ肉じゃがとメロンパンを頬張る二人。口に入ったものを飲み込むのを待っても、直ぐに次の一口を頬張って、あたしに何か言おうというそぶりは無い。なんだそれ。


「……………」
「……………」
「……その顔止めてくれませんか」
「そうさよ美人が台なしさー」
「何だかラビに言われると凄い苛々するのはなんでだろう、あっそうか変態だからか」
「なにそのすっかり忘れてたわみたいな感じ!」
「まあそれは……どうでもいいです」
「おーい紳士は臨時休業中なんか?」
「嗚呼もうめんどくさいですね」
「諦めんな頑張ろうぜまじで」
「嗚呼もうラビメロンパン喉に詰まらせろ」
「ちょ、ま、んぐ」


本当に詰まらせたラビは放って置くとして、何なのアレン、さっきから何苛々してるのよ。


「……なまえはさっきおかしいと思わなかったんですか」
「………何がよ」


アレンはもう何度目か分からない溜息をついた。何だか苛々するけど此処で茶々入れればアレンに足を踏まれるのは分かっていたから黙っておくことにしよう。


「貴女は僕達が推したからともかく、さっきあの男子……金田くん?が手を挙げたの、おかしいと思わなかったんですか」
「え、いや園田くんね。何でよ、めっちゃいい人じゃんか」
「この学校に通うマトモな生徒なら、自ら進んでやるはずが無いんですよ。体育委員なんて」
「え、いや確かにめんどくさいけどさ、別にそこまで言う必要も無くない?」
「……なまえ、貴女もしかして知らないんですか?」


アレンが物凄く真面目な顔であたしを見るから、何だか怖くなる。え、何、


「…………貴女何にも知らないで体育委員引き受けたんですか?」
「…え、めんどくさい委員なんでしょ?体育大会の計画立てたりとかさ、それくらい知ってるわよ馬鹿じゃないんだから」
「貴女は馬鹿ですか。この学校で体育委員兼体育大会準備委員の事を何て生徒会が呼んでいるか知らないんですか」
「え、そんなんあるの?あだ名?」



アレンがふわりと笑った。今まで見たこともない、笑顔。どす黒い、という形容詞に相応しい、綺麗過ぎる笑顔。



「無知ななまえに教えてあげましょうか。


貴女は"労働委員"になったんですよ」



……え、意外と禍々しく無い。拍子抜けしたあたしは、10秒後、奈落の底に突き落とされる。



「まだ分からないんですか。貴女は体育委員という名のパシリになったんですよ、………生徒会のね。此処まで言えばもう、貴女にだって分かるでしょう、」



冷たいものが、背中を伝うのを感じた。
それはつまり、

「これから一年、宜しくお願いしますね、



僕の、……ハハ間違えました、生徒会の、パ・シ・リ・サ・ン、」



悪魔が普通に目の前で肉じゃがを食べてるなんてシチュエーションも世の中にはあるらしい

10/03/14

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