あたしは運がいい。始業式の日はなんやかんやで気づいていなかったけど、出席番号順で座るこの席は1番左の1番後ろ。暖かいし眠れるしで文句なし!周りにもアレンとかアレンとかアレンとかいないし、隣は巷で噂の爽やか男子・園田くんだ。斜め前のジャスデロくんは気になるけど。…ファンキーだ。


「始業式の時に言ってたぁー体育委員兼体育大会実行委員をー決めまぁーす」


コムイ(呼び捨て)のとてつもなくのんびりした声が聞こえる。リナリーのクラスの担任じゃ無いからってやる気無さ過ぎだあのシスコン!他クラスと合同の授業とのテンションの違いはもはや詐欺である。もうめんどくさいのでリナリーのクラスの担任をやればいいのにと思うが実際無理なのだろう。ああもう教壇の立ち方からしてやる気がない。というかいま座りはじめたし。目ほとんど開いてないし。やる気ねえええ。まあ、決める内容も内容なんだけれども。体育委員兼体育大会実行委員は、名前もめんどくさいが仕事もとにかくめんどくさい。あたしのお花係のような、名前だけの委員では勿論ないのだ。つまり、究極にめんどくさい。…ん?何でアレン手を挙げてんだ?


「え、アレンくん体育委員兼体育大会実行委員やってくれるのかい?」
「違いますよ推薦です、なまえがいいと思いますなまえにしましょう決定です」
「え、アレンちょ、あたしお花係「さんせー」


声がした方へばっと振り返ればイキイキと目を輝かせたラビの姿が目に入る。あいつ………!
ラビの声を皮切りに、教室内からは次々と声があがっていく。


「なまえに猛烈似合ってるよなー」
「なまえの為に有るようなもんだよなー!体育委員兼体育大会実行委員」
「うんうんなまえちゃんにしか出来ないよねー!」

あたしは教室のあちこちから上がった声に呆然として反論の機会を失った。新クラス2日目にしてなんだこの結束力は!堅い、堅いぞ!って感心してる場合じゃないわ!


「ボクもなまえちゃんがいいと思うなあー」


教壇の陰からひょこりと顔を出したコムイは満面の笑みでこちらを見た。こ、こんの巻き毛野郎!委員決めるのめんどくさいんだなそうなんだな!?くそう………ええいここまで言われて引き下がるあたしじゃないんだから!


「そ、そこまで言うんならやったろーじゃないの!」


がたんと音を立てて椅子から立ち上がれば、ぱちぱちと教室が拍手で埋め尽くされる。くっそうアレンとラビの奴、超笑顔だ!覚えてなさいよ、ばしばし働かせてめっちゃ後悔させてやるからな!
ふんと鼻を鳴らして席に着くと、隣の爽やか男子・園田くんが手を挙げてる。もしやの反論かしら……!いい人だ園田くん!頑張れ!


「俺やります、体育委員」



って違うのね。異議ありじゃないのね………ってえええまじでか!?爽やか園田くんはこっちを向いてまじだよ、と言った。びっくりしすぎて声に出ていたらしい。


「え、本当に園田くん体育委員兼体育大会実行委員やってくれるのかい?」
「やりますよ、体育委員兼体育大会実行委員」


園田くんのしっかりした口調と裏腹にざわざわと教室が五月蝿い。あたしは思い描いていた救世主と違った形の救世主に感動すら覚えている。一緒にやってくれるのか……!流石や……!それに、アレンとラビ物凄く驚いた顔してる!ざまあみろ!


「じゃあ、なまえちゃんと園田くんに体育委員兼体育大会実行委員やってもらうのでいいかな?」


ぱちぱちとまた拍手が起こる。ざわざわは、消えないままで。それがおさまってくると、園田くんはこっちを向いて、…吹き出した。


「口、開いてるよ」


ああ、あたしはびっくりしすぎてずっと口がだだ開きだったらしい。慌ててシャッターを閉じる。


「……なんで、」
「一人じゃ、大変だろ」


俺も一応野球部だしな、と言って、また笑った。さ、爽やかだ!園田くんの周りにフラッシュが見えるぞ……!


「…あ、有難う」


……絶対に園田くんは試合中ハンカチーフで汗を拭いている!間違いない!これから園田くんの事は心の中で爽やか王子と呼ぼう。よし決定。



プリンスは二人目が出て来ることもあるらしい

10/02/06
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