「これはどういう事なんだろう」
「さあ」
「これは何のイジメなんだろう」
「知りませんよ」
「現代のイジメって陰湿なんだなーまじお母さん心配」
「何なんですか五月蝿いんですよさっきから」
「この世の残酷さを語ってるの」
「廊下でやって下さい」


ルベリエ校長の長い長い長い始業式を立ったまま夢を見てやり過ごした後、あたし達は教室で担任のコムイ…先生を待っていた。3年目ともなるとこ慣れてきた生徒たちは、ざわざわと各々の場所でお喋りを続けている。その中で、あたしはアレンの席の前の席にお邪魔していた。突っ伏したまま、アレンの机と仲良しこよしだなウフフフフとか呟くとアレンはキモッとかいう声を上から降らせてきた。女の子に(しかも上から)キモいなんて(しかも上から)言うとか紳士としてあるまじき行為だ。言うならひざまづいて見上げて言いなさいそこの君。わたしの心の声は露知らず、当のアレンはと言えば、大体何なんですか皆同じクラスになったぐらいで、とケロリと(しかも上から)言った。はあああ?皆?馬鹿言うんじゃないわよ。愛しのリナリーは違うクラスだろーが!あ、神田も違ったなそういえば。まあとにかく、あたしが同じクラスなのはあんたと、…アイツだけでしょうが!


「そういえば来ませんね、ラビ」


不意打ちで聞かされた名前にどくん、と心臓が鳴った。急に周りの温度が高くなったように思える。じわりといつの間にか現れた汗が肌を包むのを感じた。目の前のアレンはと言えば、地雷を踏んだというのに涼しい顔をしてあんパンをもぐもぐしている。くそ!こいつめ……ううん駄目だ、ここで焦ればアレンに怪しまれる。落ち着いてあたし。冷静に。うん。深呼吸。よし。


「…綺麗なオネエさんでもはべらしてるんじゃないの?今日はサボりだよきっと」


おし、いつも通りだ。あたしはイケる!


「誰がサボって綺麗なオネエちゃんはべらしてるって?」
「ぅのっほい!!」
「…何さねその声」
「え?あたしいまおはよーって言わなかった?」
「言ってないさ」
「言ってませんね」
「じゃ、お、おはよ」
「おはようさん」


アレンもおはー、なんて笑顔を見せて彼はどかりとあたしの横の空いている席に座った。意味がわからない。なんでこの人は平気で、普通に喋ってくるんだろう。あたしは物凄く物凄く気まずくて、今だってよく顔とか見れないし、掲示板見た時にはなんで同じクラスなんだよそうか拷問か、なんて思っていたのに。どういう事だ!


「アレンとなまえと同じクラスなんさね。よろしくなー」
「………」
「………」
「え、無視?」
「あ、ごごごめん考え事してた」
「あ、すすすすみません考え事してました」
「アレンそれ絶対考え事してないさね?始業式からなんなんさ!オレ泣いちゃうよ?ちょっとまじ泣いちゃうよ?」


ラビはそう叫ぶとわざとらしく手を目元に当てて泣く仕草をし始めた。……うん、やっぱりラビはいつも通りだ。いつも通りウザい。ひょっとしたらあたしはアレを気にしすぎだったのかもしれない。おし決めた、あたしもくよくよネバネバあの事を気にするのは止めよう。普通に、いつも通りに!うん!おっし、何だか超スッキリしたぞ。


右手を上げて盛大にガッツポーズをする。何なんですか急に、と物凄く気持ち悪いんですけど、って顔をしてアレンは言った。そんなアレンの暴言も今のあたしには涼しいもんよ。フハハハハ。


「悪いけどあたしはさっきまでのあたしじゃないわ」
「そうですね分かります。気持ち悪さが桁違いですよね」
「おい表出ろ」
「おーい」

さっきからオレ空気じゃね?というラビの呟きも、い つ も ど お り に 華麗にスルーした。グッジョブ、完璧だ。



プリンスはプリンスすぎて空気らしい

10/02/01
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