プログラムが読み上げられ、ぞろぞろと赤白青の鉢巻きを付けた生徒が入場した。皆の手にはその鉢巻きと同じ色の玉が持てる限り握り締められている。それは私も同じで、現に私の手には8個の玉があった。ちらりと隣に立つアレンの手を見れば、その手に1個しか握られていない。
「ちょっとアレン、君やる気ないんかい」
「馬鹿言ってんじゃないですよ、僕はやるからには勝ちに行きますから」
「そんな事言って1個しか持ってないじゃん」
そう言うと、貴女の目は何処に付いてんですか、とあからさまに溜息をつく白い頭。失敬な、と喉まで出かかった言葉は、次々とアレンの手から生まれて来る白い玉によって行き場を失う。
「アレンちょっと君………詐欺師だったのね」
「手品師です」
アレンの腕の中には優に10を越えた玉が抱えられている。
「アレンむしろそれ投げにくくないんさ…?」
「一気に決めますよ」
「どうやって」
「ぽーんて入れます」
「なんてアバウトな」
位置について、とアナウンスが響き渡る。
「用意、」
パン、というピストルの音と共に雲に覆われた空は3色に染まった。私も皆に負けじと手に持った玉を投げる。けれど、全て篭の向こう側に飛んでいってしまう。傍に落ちている玉を拾い集めて投げても一向に入っていかない。
「あー!!もう玉が軽い!!小さい!!」
「当たり前ですよバスケットボール投げてどうすんですか篭に一個しか入らないでしょうが馬鹿ですね」
「そういうアレンはどうなのよ!!」
「まあまあですね、一回に二個入りますから」
「十何個も一気に投げてでしょうが!そのぽーん戦法やめなさいよぽーん戦法!」
「いや、一回に二個入りますから」
「誰かこの子止めてー!」
「いやあ俺も全然入んないわ」
「園田くん!野球部ピッチャーでも手強いですかこの篭は!」
「あー、どうしても加減が分かんなくてな」
そう言ってひょい、と投げた玉は篭まで届かずに私達の所に戻ってきた。
「………………」
「もー皆下手くそさねー」
「そういうラビはどうな、」
振り返ったそこに居たのは玉を次々と篭に入れるラビのような外見のひと。
「誰だあんたは!」
「ラビだっつの!」
「ラビはそんなホイホイ玉を篭に入れるようなイケメンな感じの子じゃないわ!」
「オレなまえにどんな脳内イメージ持たれてんの」
「変態?」
「即答すんなよ!」
ピピ、と笛が鳴って空を埋め尽くしていた玉が無くなる。篭を支えていた係の子によって篭は倒され、数え上げられていった。
「ねえラビ(仮)、それで結局何個入ったの」
「仮って何さ仮って……あー………21個」
「にじゅういっこ!?」
「神だ、神が降臨なさった!」
「神すげえ!」
「まあ誰かさんのせいで100M走でこけて怪我してなかったら倍は入ったなー膝痛いさー誰のせいだろなー」
「酷いわ何て事を……」
「お前だよ」
傷だらけの神様とかそんななつかしの名曲みたいなこともあるらしい
10/06/19