雲雀って、ケモノみたいだよね。口笛を吹くかのように軽く呟いた言葉に、彼はぴくりとその眉を動かした。滑らかな動きでロッキングチェアから立ち上がった彼は、目の前のデスクに散らばる資料を鮮やかにまとめて引き出しへとしまい込む。すこし怒らせてしまったのかと、息を詰めながら彼を見つめていると、デスクに残った数枚の紙を引き寄せた雲雀は、ぐしゃり、と一瞬で白い紙をごみくずに変えた。


「………怒った?」


わたしの問い掛けを華麗に無視した雲雀は、手の平の中の紙屑をデスク横のダストボックスにほうり投げたあと、夕焼けの紅い光が差し込んでいた窓のカーテンをすこしだけ乱雑に、閉めた。シャ、というカーテンレールの擦れる音が、息を詰めたわたしの耳に届く。瞬間、風紀委員しか使わないこの応接室の電気が、パチリという音とともに、落ちた。もともと点いていたのは雲雀のデスクライトだけだったから、誰が消したかなんて考えなくても分かるけれど。真っ暗闇のなかで、わたしの抑えられた息遣いだけが震える。頭のなかで、どくん、どくん、と心臓の音が聞こえた。それを掻き消したのはやっぱり、彼の軽やかな声に他ならない。


僕は人間だよ。


がたんとソファが鳴る音がした。そんなこと言って、雲雀だって動物の1番根源的な欲求に従ってるじゃない。そういうところがケモノみたいだっていってるのに。反論は声にならずにゆるりと彼の喉に吸い込まれていって、視線は彼がぺろりと妖艶に舐めた紅い唇に釘付けになる。すこしだけ乱れた息遣いに混じって、彼はその唇から音を漏らした。忘れちゃいけないよ。人間だって動物だ。耳元でそう呟いた声が鼓膜を震わせて、わたしの奥がじんと鳴る。仕返しとばかりに、わたしは乱れたシャツから覗いた白い肩にがぶりと噛み付いた。


希望を孕んだペテン師


12/06/10
アルテミスの賛美歌さまに提出


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