ずどんがたんばったんという何とも非日常のようでそうでもない音がドアの向こうで発生したのを聞いて嗚呼、と独りでに溜息が漏れた。この後の自分の展開が読めた、否、読めて しまった 俺はほんの今まで視線を巡らせていた資料の束をテーブルに置いてソファにもたれ掛かる。3、2、1、0。こころの中でぜろ、と呟いたそのとき、がん、と部屋のドアが本来ならば立てることが生涯ない筈の音を響かせて本当に面倒臭い女が姿を現した。

「ちょっとスクアーロ助けてやばいまじころされる」
「てめノックぐらいしろおおお」

ちょっとわたし生きるか死ぬかなんだよ!と夜中に大声で喚く女に聞こえるように舌打ちをかましてソファから立ち上がる。多分間違いなく俺の行為は意味を持たないことなど理解してはいたが、逃げてきた女を追い出す程の冷徹さは持ち合わせていない俺は、どうしたとそれだけ女に言った。

「だからころされる!」
「あぁ?誰にだあ」
「ちょっとスクアーロ分かってるのに聞かないでよ!」
「知らねえよ誰だっつってんだろお」

ひっどスクアーロ非道!だかなんだかよくわからないことを叫ぶ女に大仰に溜息を漏らして、はいはいと適当な相槌を打っていれば、思った通り、というより何時も通りに先程よりも音量を上げたドアの悲鳴が部屋に谺した。もうどいつもこいつもこの部屋誰のだと思ってんだ。

「このドカスが」
「ちょっスクアーロヘルプ!生命の危機!」
「うっせええ」

勝手にやってろ、そうこころの中で吐き捨てたとき、勝手に(こいつもノックすることを知らねえ)クソボスは俺の部屋をずんずんと大股で闊歩して俺の後ろに隠れていた女の腕を鷲掴む。まって助けて生命やばいとぎゃんぎゃん叫ぶ女の声は耳に小指を突っ込んでシャットアウトし、夜中に大層五月蝿い二人に背を向ければ、小指の隙間から聞こえたスクアーロさまあああとかいう叫びと共に俺のソファに向けた一歩は叶わず終わった。後頭部に感じた尋常ではない痛みに俺は初めてこのクソボスがボンゴレのボスになるまで髪を切らねえと言ってのけた過去の自分を呪った。お前ほんとまじふざけんな過去の自分。髪なんか伸ばしたってくっだらない理由で生命の危機を感じた女が助けを求めて掴むぐらいしか用の無いくせに。髪まじいらねえ。ふつふつと沸き上がる苛々を存分に込めて叫びながら二人の方に振り返れば、何故だか知らないし知りたくもないが、何故かこの数瞬の間に和解の糸口を見つけたらしい二人は見つめあって甘い雰囲気を漂わせている。もう意味が分からない。こんなことを毎日のように繰り返して一体何が楽しいのだろうか。そろそろ俺の部屋のドアは限界を迎えようとしているというのに(最近開ける度に工事現場の様な音がする)。毎日同じ事を繰り返させられている俺にはこのあとの展開など分かりたくもないのに読めてしまう。そしてこの二人は、終いには人様の部屋でキスまでおっぱじめるのだ。人様の部屋で。俺の部屋で。俺 の 部 屋 で。嗚呼ほらもうやらかしやがった。嗚呼もうほんとうぜえこいつら早く駆け落ちでも何でもしろ。そしてこのアジトを出ろ。というよりこの世界から抹殺されろ。二人でよろしくやってろこのクソカップルが。一通りしたいことはしたクソカップルの片割れは自分の部屋にも関わらずあてもなく立ち尽くす俺に向かってちょっとじろじろ見ないでよへんたーいとそのまんまの音で言った。嗚呼静まれ俺の殺意。


everyday incident !!
(日常茶飯事)


11/02/27

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