海に沈む鼓動06

――――あなたはもう大丈夫。――――





最後にしようと思った。




もし、この心臓がもう一度躰を手に入れたら。





最後に一度だけ、あなたに抱かれたいと思った。




ガラスからは自力で出ることはできなくて、ローのそばには行けなくて…。



辛い時に声を掛けてあげる口もなくて…。




それでも、あなたは自分で答えを見つけてきたよね。




一歩一歩、強くなってる。

船長として成長している。


そんなローを見てきた。



ガラスの中から見るあなたは、日に日に大人びて、素敵な男性になっていっちゃう。




私は自分じゃないこの躰で、一生ローの罪悪感とともに過ごしていくのは耐えられない。



解るんだ。



触られるたびにざわつく肌。
濡れない自身。



心臓以外のすべてがローを拒否してる。



『ロー…。ありがとう。』




ありがとう。


死んだ私に、もう一度夢を見させてくれて。


それだけで十分だよ。





「やめてくれ…。おれは…。」


『ローも分かってるんでしょ?所詮この躰は…他人なんだよ。私には解る。』





裸のまま、抱きしめる。




せめて、私のこの心臓に、あなたの暖かさを覚えていたいから。




唇を合わせた。





そうだ。


ローの唇は、こんな形だった。



手の大きさだって、タトゥーの一個一個だって。



全部、指でなぞって確かめた。






『ごめんね。最後のお願い聞き分けてくれるね?もう、元の私には戻れないの。だから…この躰は元の子に返してあげて。』




「っ…。…解った。」




『ロー。今までありがとう…。幸せになってね。』





衣服を整えて、船を降りる。
その時間はあっという間に過ぎて…。




短いけど、永遠に感じた。





最後のROOMとシャンブルズは、とても悲しそうな声で。





どうか泣かないで。



私の願いは、きっと届いてくれる。






そう願ってやまない。




どうか、彼が泣かないように。








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