夜兎と高校生

※闇い夜に煌めくはの現パロ(高校生)×3Z(夜兎工)設定
 妄想の産物なので苦手な方はバックです
 本編とはなんの関係もないただの幻覚






何故か街の中でやけに目についた。
とにかくそれが光って見えた。太陽の光がそいつだけに当たって反射してるみたいに。
街中ではなかなかお目にかからない透き通るようなピンク色の頭をしていたからか、どこの制服かわからない真っ黒のセーラー服から覗く腕と脚がやけに真っ白だったからか。
某コーヒーショップのホイップクリームがマシマシに入ったフラペチーノが美味そうだったからか。
じぃ、と見つめていたせいか、フラペチーノをストローで吸い上げている女が、こちらを見た。勝気そうな、少し気の強そうな蒼い双眸と一瞬目がかちあう。あ、タイプかも。


「悟?何してるんだい、いくよ」
「あ、おう…」


親友の声でようやく自分の視線がそれから離れた。一服が終わったらしい硝子が携帯灰皿にタバコの吸い殻を押し付けていて今からカラオケに行く予定だったことを思い出した。振り返ってみると、先ほどまで目を奪われていた存在はそこにいなくて、少し残念に思った。



「悟、悟、君の番だよ」
「えっ、あ、おう…」


目の前にずい、と置かれたマイクを手に取った。軽快なギターの音とともに既に歌い出しのはじまった画面は足早に歌詞を表示させていくがもはや歌う気になれなくてがたんとマイクをテーブルの上に放り出す。


「?どうしたんだい、さっきから」
「ー、あーやべーかも」
「?何が」
「さっき見た、ピンクの頭の女、肌が異様に白くて、気ィ強そうで可愛かった」
「は?」「ぶはっ」
「え?いま硝子笑った?」
「悟、熱でもあるのかい?」
「暑さにやられたんだろ」
「俺が女の子可愛いって思っちゃダメなわけ?」
「一目惚れなんて無縁の人間だとは思ってたよ」
「どうせヤりたいだけだろ」
「オマエら俺のことなんだと思ってんの?」


一目惚れ、そうか、これが巷で話題の一目惚れってやつなのか。ヤりたいかヤりたくないかで言われればそりゃヤりたい。健全な男子高校生だもの。
だけど、そーゆーんじゃなくて、頭から離れないつーか、気づいたらあの蒼い瞳とピンクの頭が脳裏をよぎるつーか。多分また街で遭遇しても目が離せなくなる気がするというか。


「それは恋だね」
「ウケる。クズにも恋なんてできたんだ。星○源歌っとけば?」
「は?俺今口に出してた?」
「モロにね」
「アーッハハおかしー。バッサリ振られればいいのに。今までの女子たちの恨みで不幸が降りかかってもおかしくないね」
「硝子、そんなこと言ったら悟が可哀想だろう。漸く初恋童貞を捨てれるっていうのに」
「オラオマエら表出ろや」


デンモクを操作して割り込みで曲を入れ、俺の入れた曲を削除してマイクを差し出した傑からマイクを受け取り、仕方なしに歌い始める。歌詞の意味なんて今まで考えたことなかったけど、こいついい曲書くな、なんて思った。ノリノリでプロモーションビデオと寸分違わぬダンスを踊り始めた傑と硝子はニヤニヤとこちらを見てきて心底うっぜぇ。
あーまた会えないかなあのピンク頭。




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「なまえ?どうしたの?」


視線を感じて一瞬目があったと思った男はサングラスをしていて目があっているのかあっていないのかわからなかったが、確実に見られているな、と思った。だけど、友人といたのかすぐに視線が逸らされた。男一人と女一人と楽しそうに話している。白髪なんて珍しいし、すごく背の高い男だ、とても目立つ。
クレープを両手にオタ芸のサイリウムのように指に突き刺すように持ってきた神威。「食べる?」とニコニコそれを差し出してくれて珍しいこともあるもんだなあと、口がフラペからクレープの気になってしまったので、さっさと飲み切ろうと吸い上げた。じい、と私のフラペを見つめてくる神威に飲む?と聞けば嬉しそうに笑うのでストローを差し出したら吸引力の変わらない掃除機よろしく一気に全て吸い切られて思わず殺したくなった。


「日差し眩しいからどっか入ろ」


神威が買ってきたクレープ屋のキッチンカーの後ろにあるパラソルとベンチを指差して歩く神威についていく間もキラキラ光る白髪がどうしても忘れられない。もう一度振り返ろうとすれば、前を歩いていた神威に突然口に突っ込まれた甘いクレープに意識を持っていかれてしまう。もぐもぐと甘いクレープを咀嚼すれば清々しいほどの笑みを湛えて「これ食ったから今からなまえ俺のパシリね」と宣う神威に異議を申し立てている間に大きな白髪男はすっかりどこかに消えてしまっていた。