「…ひっ……うっ…ちちうえぇ……グスッ……どこ、ですか…?」
森の中、一人泣きながら歩いているのは皆本金吾だった。
今年8歳になった彼は、父に連れられ家の近くの森へ狩りに来ていた。
ところが、ふと目に映った蝶々に気を取られていると、いつの間にか父の姿はなくなっていた。
日頃から泣いてはならない、強くなれと言われてはいたが、元々の性格からか自然と目から大量の涙が零れ落ちる。
道も分からず、宛もなく歩いているとさらに森の奥へと迷い込んでしまったらしい。
今や右も左も分からない。
木の葉が重なり日の光さえも射さない暗い森で、たった一人。
金吾は益々涙を溢れさせ、途方に暮れる。
その時、何かがこちらへ走ってくる音が聞こえた。
人の足音のようだったが、それはピタリと止まってしまった。
どこから聞こえてきたのだろうと辺りを見回すも、人の姿は見当たらない。
再びポロリと流れそうになった涙をこらえた時、見知らぬ少女が隣に立っていた。
back