振り返ったナマエは自身のベッドに先程まではなかった黒い人影を見つけ、「誰…?」と小さく声を掛けた。

しかし返事はなく、ナマエは恐る恐るベッドに近づいていく。

その人影が動く気配は全くないが、大きさから自分と同じくらいの子であると推測出来た。

そして、

「……金吾!?」

ベッドのすぐ側まで近づいて、ようやくそれが一年前に出会った金吾だと分かった。

どこから現れたのかは分からないが、今し方の落下音は確実に彼が原因だろう。

服はボロボロで、体は擦り傷や切り傷だらけ。

気絶しているらしく呼び掛けても反応はないが、そんなに大きなケガは見当たらない。

ナマエは素早く引き出しから救急セットを取り出すと手当てを始めた。

その間も金吾が目覚める様子はなく、目を閉ざしたまま。

腕や足についた砂や泥を水に濡らしたタオルで拭き取り、傷口に消毒液を掛ける。

今回ばかりは応急手当てについて教えてくれた教師に感謝し、手際良く進めていく。

やはり命に関わるほどの大きなケガは見当たらず、ナマエはホッと胸を撫で下ろした。

段々と夜も更けていき、手当てが終わる頃には月も空高くに昇っていた。


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