「まあ、可能性の話であってそうとは限らないけれど。
第一違う世界…なんて、そんな物あるか分からないしね。」
ナマエはそう言い、繋がっていない手を前に出した。
指差す方向を見れば、明かりが射し込んできている。
「ほら、あそこが出口よ。
…どっちが速いか、競争!」
「あっ、待ってよー!」
ナマエは手を離すと走り出し、金吾は慌てて追いかける。
ドレスが邪魔してか、ナマエのスピードはそう速くはなかった。
ナマエが出口に着くのが先か、金吾が追い抜くのが先か。
五分五分と言った所だったが、森を抜けたナマエは自分が勝ったと思いつつ振り返った。
「私の勝……あれ?
金吾、どこー?」
そこに金吾の姿はなく、木々が鎮座しているだけだった。
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