ある雨の降りそうな日だった。
急いで帰ろうと早足で山道をはしっていると
「…えっ…?」
血まみれの女の子が倒れていた。
「大丈夫かい!!??君!」
「うう…」
あわててかけよる。
体中に擦り傷、そして刀で切られたような傷があり意識も朦朧としていた。
誰がこんな酷いことを。
そう思っていると女の子が傷だらけの腕で力を振り絞りながら森の方を指さした。
「村……おうちが…お父さ…おかあさ…しんじゃ…た…みんな…ッゴホッゴホ」
「しゃべっちゃだめだ!!!」
この子の家になにかあったのか。
今は目の前の少女の傷を手当てするのに必死だった。
そのまま気を失った少女を応急措置をして背負い、指をさした方向へいった。
そこには小さな村があった。
いや。村があったはずだった。
焦げた匂いと血の匂い。
たくさんの切られた死体と家々が焼き払われたあと。
この世のものとは思えない風景に立ち尽くしているばかりだった。
さっきの少女はここを掻い潜って来たのだろう。
子供にも容赦はしなかったのだろう。
小さな村は一瞬にして消えた。
ここにある大切なものはすべてうしなわれたのだ。
そう思うと引き返した。
今は助かった命を守らなければいけないと思ったからだ。
伊作は少女をそっと背負い直し
急いで学園へ戻った。
((「君の命は絶対守るから」))