「…?」

伊作がいない日が数日続いたある日の事。
伊作の様子をみてくるから部屋でおとなしくまってるように。と留三郎にいわれ一人まっていた小愛の前に男が一人天井から現れた。
男は留三郎によく似ていた。しかし所々違う所もあった。
不思議に思い小愛は留三郎(仮)に話しかけて見ることにした。


「とめしゃんじゃない…?おにいちゃんだあれ?」

「!!」


留三郎(仮)は入って来たとき、小愛が見えていなかったのか一瞬驚き、構えたが、あまりに小さい相手にぽかんと脱力した。


「おー?なんざーめんげえあまっこだったサー。迷子になったんかー?」

「こよりまいごじゃないよ?おにいちゃだあれ?」

「オラは錫高野 与四郎だーヨ。おめーは?」

「こよりは羽島 小愛だよ!」

「小愛かー!めんげーなあ!オラの事は"与四郎にいちゃん"てよんでくれナー」

「うんっよしろーおにいちゃ!」


与四郎はうれしそうに小愛をだきあげ頭を撫でた。
その時、がらりと扉があき留三郎がかえってきた。留三郎は与四郎を見た瞬間、驚いたものの、またか…という表情にすぐ変わった。


「…おい与四郎。」

「おーなんだぁ留三郎!おそかったなあー」

「よしろーおにいちゃととめしゃんなかよし?」

「おーよ留三郎とはにこいちだんべー」

「まてまてまてまて!!!与四郎!あれほど勝手に忍び込むなと!ていうかいつの間にそんなに小愛と仲良くなったんだ!それに訛るなといってるだろ!分かりにくいんだ…!あとにこいちってなんだにこいちって!!!!」


一息でツッコミを入れ、肩で息をしている留三郎に、与四郎は小愛を撫でながらため息をついた。


「情けないぞ留三郎。小愛は俺の言葉がわかると言うのに。」

「なっ…!そ…それよりお前は何しにきたんだ。」

「ああ。伊作が風邪だときいて留三郎が暇だと思いな。あと喜三太に会いに。」

「いらん!!!!っていうか本当は喜三太に会いたかっただけだろう!」

「しかし小愛に会えたしここに出て正解だった。」


留三郎がため息をつく。与四郎がそれを尻目に小愛になーっ!っといいながらぽんぽんと頭を撫でると、小愛も楽しそうになーっと与四郎の真似をした。


「ところで何で小愛みたいなこんな幼い子がここにいるんだ。」

「ああ…それはカクカクシカジカで…」


留三郎は懐から"角"と"鹿"のパペットをとりだし、ぴょこぴょこと動かした。


「ふおーっしかさん!」

「なるほど…。伊作ならやりそうな事だ。」

「今のでわかったのかよ!」

「当たり前だ。忍たまのお決まりだからな。」

鹿のパペットとじゃれる小愛を写真におさめながらツッコむ留三郎に、与四郎は然も当然だと言うように答えた。そして外をみてはっとしたように言った。


「そろそろ喜三太にあって風魔にかえらなくてはな。」

「本当お前はいつも忙しいやつだな…」

「小愛ーっにいちゃんまたきてやっからなあー!」

「うんっ!よしろおにいちゃまたきてね!!」

「いつお前が小愛の兄になったんだ!早く行け!もう来るな!」


留三郎は与四郎の首根っこをつかんで外へぽいっとほうりだし、ぴしゃりと扉を閉めた。
一人外へほうりだされた与四郎はぽつりと「小愛か…」とつぶやいて喜三太のいる長屋へ向かったのだった。







((「妹みてーでめんげえなあー」「あーっ与四郎せんぱぁいっ!!」))




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