「あれ?」



いつものように孫兵のペット・ジュンコを探していた八左ヱ門は庭の端で一人座りこんでいる小愛を見つけた。
いつもは伊作達といるので一人なのが珍しい上に、なんだかだれかとはなしている。しかし人の気配はないのだ。
八左ヱ門は不思議に思って少し近づいてみた。


「ジュンちゃーまごは?ジュンちゃもまいご?そっかぁーさもんやさんのすけといっしょさんねー」


ああジュンコと話しているのか。八左ヱ門はジュンコは敵意のない人には攻撃してこないことを知っていた。そしてジュンコが見つかったことで安心して小愛に話しかけた。


「小愛。こんな所で一人でどうしたんだ?」

「あ!はっちゃ!あのね!こよりおにわにジュンちゃがいたからおはなししてたんだよ!」

「そっかー!善法寺先輩は?」

「えっとねーいさっくんはかぜー!とめしゃんはじゅぎょー!」

「風邪?」

「うんー!でねーこへがじっしゅだなーっていってね。せんちゃがはっちゃたちのとこであそんでこいーって」

「ああ。なるほど…!」


つまり噂にきくと小愛は最近まで風邪をひいていたらしいので、大方世話をしていた善法寺先輩にうつってしまったのだろう。
善法寺先輩が風邪で他の6年生は授業。善法寺先輩の近くにいてはまた小愛に風邪になってしまうので5年生にあずかってもらおうということらしい、と八左ヱ門は考えた。
しかし残念ながら、5年生い組は授業、雷蔵と三郎は学園長のお使いでいないのである。
するとむこうの方からキョロキョロとしながら孫兵が近づいてきた。


「ジュンコー!!竹谷先輩ジュンコ見つかりましたか!?」

「ああ。小愛が見つけていたよ。」

「!…そっか。ありがとう小愛。」


孫兵は少し驚きながらも小愛の頭を撫でた。
小愛は楽しそうにジュンコと話しをしたと、孫兵に話していた。
八左ヱ門は少し考えこれなら委員会でも大丈夫だろうと、1年生達が待っている小屋の前に連れていくことにした。


「孫兵。しばらく小愛をあずからなければならない。というわけで生物委員会で小愛を世話をしようと思う。」

「え。たしかにジュンコとは仲はいいですが、少し危険なんじゃないですか…?」

「大丈夫だ。俺が危なくないように見ておくからな。」

「そうですか…。じゃあはやく1年生と合流しましょう。」

「そうだな。あ。おーいおまえたちー。」

「あっ竹谷先輩、伊賀崎先輩ー」

「ジュンコは見つかりましたか?」


八左ヱ門達が小屋の方へ向かうと1年生4人がわらわらとこちらへ走ってきた。
それに少し驚いたのか、小愛は八左ヱ門と孫兵の袴をぎゅーっと掴んで後ろへ隠れた。


「?どうしたんだ小愛?」

「びっくりしたんじゃないですか?」


孫兵は小愛の目線に合わせて座り込み、小愛の頭を撫でた。


「大丈夫。この子達は僕たちの後輩だから」

「だいじょぶ?」

「うん。大丈夫。」


小愛がおずおずと顔を除かせると1年生達は目をキラキラさせて待っていた。


「えっとこよりは羽島 小愛だよー。おにいちゃんたちは?」

「あっもしかしてあの小愛ちゃん?」

「きっとそうだよー…!」

「善法寺先輩が拾ってきた子だよね!」

「それより自己紹介しなきゃ!」

「はいはーい!1年は組の夢前 三次郎だよー!」

「同じくは組の佐武 虎若!」

「ろ組の初島 孫次郎ー…」

「い組の上ノ島 一平!」

「ねー!一緒に遊ぼうよ小愛ちゃん!」

「う…うん!!」


そんな光景をみて微笑ましいとおもっていた八左ヱ門は数日後おこることなどまだ知るよしもなかったのだった。








((「先輩。頬が緩みきっていて気持ちが悪いですよ」「えっ…」))





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