「しかし学園へは実質一年程しかいなかったからな…。
お前たちが知らないのは無理もない。
…そういえば、小平太。」

「なんだ?」

立花が何か思い付いたように七松の方を向く。

「ほら、お前のとこの一年生。」

「金吾?」

「そうそう。
確か皆本と言わなかったか?」

「それが何か……あ。」

首を傾げていた七松も、ようやく立花の言いたいことが分かったらしい。

「あいつ金吾の姉ちゃんだったのか!」

「いや、そうとも限らん。」

「しかしあいつの実家も相模だったろう。」

「それに武家の出身で戸部先生の弟子だ。」

「でも金吾と名前は全く似てないぞ。」

「らちがあかん。
本人に直接聞いた方が早いだろう。」

話し込んでいた六年生だったが、パンと手を打ちそう言った立花に頷き、戸部達が向かった方へ歩き始めた。

「なんか面白そうだな。
俺たちも行こうぜ。」

五年生達も竹谷の提案に乗り、六年生の後に続いた。

彼らが廊下を曲がったその時。

「……?」

誰もが空気の移り変わりに気づき足を止めた。

どこか張り詰めたかのようなその空気がピリピリと肌を刺す。

「…行くぞ。」

目付きを変えた潮江が低い声で言い、足音をたてずに再び歩き出した。

他の者も真剣な表情になり、それに倣う。

やがて校舎同士を繋ぐ渡り廊下が見えてきた。

そこは外へも通じていて、小さな広場のように開けている。

肌に感じる緊張感がその場所へ近づくにつれて強くなっていき、渡り廊下へ着いた彼らは息を呑んだ。

外の開けたその場所に、木刀を向けあい対峙する戸部と名前がいた。

その二人が纏う気に当てられ、上級生達は言葉を発することも目を離すこともできなかった。

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