丸井 | ナノ






ぱちり、瞼が開いたとき、枕元の携帯が震えていた。誰だよ、こんな時間に。揺らぐ意識の中サブ画面を見ると、『あいつ』の3文字。携帯を開けて、メールをひらく。



06/16 02:27
Form:あいつ
Sub:(non title)
―――――――――
電話していい?


―――End ――――



一行。超簡潔な内容だ。わかりやすくて大変よろしい。カチ、カチ、カチ。のろまな親指がボタンを押していく。そのとき、返信画面がフリーズして、着信画面になった。いつぞやのプリクラが出てくる。あいつ、勝手に設定いじりやがったな。俺は通話ボタンを押し、携帯を耳へ近づけた。


「安眠妨害」
「ブンちゃん…っ」


第一声はか細く、気が動転しているようで、ぐすぐすと続けて聞こえた。どうやら非常事態のようだ。俺の脳はやっと起動し始める。


「怖い夢でも見たのか?」
「ちが、うの」


俺の予想はあっけなく外れた。寝返りを打ち、他の理由も考えてみる。


「ブンちゃんに会いたいの」
「…」


まだ考え中だった脳みそにとんでもない答えがどーんとやってきた。俺は目を丸くする。頭が完全に起きたみたいだ。たしかにお互い違う高校に入ってからは、会える回数はずっと減っていた。


「ごめんな、寂しい思いさせt「でも、ブンちゃんの声聞いたらなんだか眠くなってきた」


…は?
せっかく誠意を持って詫びたのに、それを遮って放たれた言葉は間の抜けたものだった。俺の声はお前の睡眠導入剤か。

「おやすみー」


プッ
ツー ツー ツー



「………」


そして最終的に切られるという。なんだよ、馬鹿馬鹿しい。マジで悪いなと思った瞬間を返せ。つうか睡眠時間を返せ。あーあ、やってらんねえよ。

俺は布団をかぶりなおし、再び目を閉じた。

「…」


左を向く。

「…」

右を向く。

「…」

また左に向きなおす。

「…」

また右。


「っああ!眠れねェ!」


ちくしょうあいつ、その気にさせるだけさせておいて、あとは放置プレイかよ。あいつの声が頭から離れねんだけど。「ブンちゃんに会いたいの」がエンドレスリピートなんだけど。



そりゃないぜハニー
(会いたくなるだろい…)




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