小説 | ナノ


 最悪だ。私の脳内はこの言葉で埋まった。まず、誕生日なのに追試であること。そして、それが高杉とふたりであること。
 クラスメイトの高杉は、私が最も苦手とする人物だ。学校にはあまり来ないし、いつも『話しかけんなオーラ』を出している。なんで、なんで私なわけ? 総悟もたしか追試がなんとかって言ってたはずなのに。まさか、あいつ裏切ったな。
 すぐ隣の席にいる高杉の存在を忘れようと、私は必死にひとりごとを頭のなかで展開させる。「おい、お前」高杉の声がした。え、わ、私?


「無視すんな」
「な、何?」
「ただ追試を受けるだけじゃァつまんねぇと思うだろ?」
「は?」


 高杉は怪しい笑みを浮かべながら、シャーペンで私を差した。

「お前、俺の点より低かったら、今日から一週間、俺の下僕な」
「は、はぃぃぃぃ!?」


 最悪だ。今日はホント。突然つきつけられた命令はあまりに理不尽。しかし「勝つ自信が無いなら逃げな」なんて言われたから、私もカチンときちゃって、不登校には負けねぇとその条件を承諾してしまった。そして本日3つめの最悪ポイント。

「ま、負けた……」


 2点差、という接戦だったにしろ、負けは負け。ろくに授業も出ていない奴に私は負けた。絶望のなか、高杉の一言が私を奈落の底へとトドメの台詞を放った。


「ってことで、お前は今日から俺の下僕だ」


 本当に、もう、最悪!!

 ………な、ハズだった。


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