小説 | ナノ


 はぁ。私の口から漏れたのは大きな溜め息だった。机にだらしなく腕置いて顎を付いている私の目の前に、菊丸の顔がある。女の子みたいに大きな2つの目がまっすぐ見てきてて、ちょう不快。私は菊丸が気に入らないのだ。

「おっきいため息〜」
「ほっといてよ」

 もう一度言う。私は、菊丸が気に入らない。同じクラスになったのは3年が初めてで噂を耳にしていた程度。見てたら、いつも騒がしくてたまにこうして話し掛けてきたかと思えばすぐに不二のとこに行く。不二の笑顔には、すべてが見透かされるようで好きじゃない。こんな2人のどこがいいんだろう。黄色い声をあげる女子の気持ちがわからないしわかりたくもない。

「なまえ〜」

 最初に話しかけられたときも、こうだった。気安く名前を呼んできた。私は顔だけ菊丸の方に向けると、そこには笑顔の菊丸と全く手のつけられていないプリントがあった。

「プリント、見して!」
「もう授業始まるよ?」
「だいじょーび。菊丸様の手にかかればチョチョイのチョイだから」

 それなら初めからやってこいっつの。あぁやだ。無性にイライラする。きっともうすぐテストだからだろう。私は認めない。最初の会話を覚えてるのも最近よく私の視界に菊丸がいるのも、すべて偶然だ。

「ねぇねぇ」
「何」
「ここの公式なんだけどさ」

 この笑顔も、裾をひっぱる仕草も、煩わしい。夜中に思い出すと心臓がうるさくて眠れなくなる。そう全部こいつのせいだ。責任取ってほしい。


(もう知らないっ)
(おわ、ビックリしたあ)
(知らないもん)
(顔、赤いよ)
(不二うるさいっ)



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bgm by リン
この曲かわいいですよね
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