小説 | ナノ


※3Z





「キスしろ」
「はっ!?」


 それは、いつもと何ら変わりのない昼休みのこと。突然だった。後ろの声に振り向けば、だらしなく椅子に座っている沖田が自分の頬を差してこちらを見上げてきてる。


「はやく」
「いや、意味わかんないから」


 なんでわたしが沖田と? なんかわたし悪いことしたっけ? ざわつく教室のなか、わたしと沖田の周りだけがやたら静かに思えた。なんでこんなときに限って誰も話し掛けてくれないんだ。あえてのKYなのか。痺れを切らし始めている沖田は、椅子を前後に揺らしだす。


「午後の授業はじめんぞー」


 銀八先生が足で扉を開ける。手にはたくさんの種類の砂糖。どんな国語の授業? 各々の席へみんなが戻りだす。沖田も、「後で覚えてろィ」と捨て台詞を吐き、こちらへ向けていた椅子を教卓へと戻した。



「誕生日、おめでとう」



 頬にかるく口づけて、そそくさと席に戻るわたし。横で沖田は派手に椅子から転げてる。



「こらそこ、イチャつくのは放課後にしろー」



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連載の沖田がとことん報われてないので、ここでは幸せな感じにしました(笑)
沖田くんおめでとう
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