小説 | ナノ


 「じゃ、行ってくる」と、茫然自失な私を置いて雅治くんは学校へ向かった。
 あの背格好、あの切れ長の眼、あの堂々とした性格、どこをどう見ても年下とは受け取れない。私は同い年だとばかり思っていた。あんなに大人っぽいのに。


(私が子供すぎるのか。)


 考えると哀しくなったのでやめた。



 入学までの残り5日間、言うなれば私は暇人だ。この近くで友人は居ないし、『まーくん』の手掛かりも、正直なところあの写真と曖昧な記憶しかなくて探すに探せないのであった。カチコチカチ。時計の針だけが進む。じっとしていたって仕方ない。これからお世話になる身として、誠意を表そう。とりあえず掃除だな。雅治くんはきっとめんどくさがりなタイプなんだろう。隅々に埃が溜まってるのが、実はとても気になっていた。掃除が終われば夕飯の買い物に行こう。


「よし!」



 計画はばっちり。私は意気込んで立ち上がった。










 ガチャ

 ちょうど夕飯のシチューが煮立ってきたころ、玄関のドアが開く音が聞こえた。雅治くんが帰ってきたのだろう。


「あ、おかえり――」
「ちょ、結構可愛いじゃん」
「どれッスか!丸井先輩、俺にも見せてくださいよ!」
「うわっ押すなよバカ!」


 雅治くんだと思って声をかけたけど、全然違うひとたちがリビングへ入ってきた。そして私の声がいとも簡単にかき消されるほどにはしゃいでいる。


「しかも夕飯まで作ってくれてるし」
「これシチューじゃないスか!うまそ〜」
「…悪い、そいつら部活仲間」



 遅れて雅治くんがやってきた。なんだかぐったりとした表情だ。いつにも増して目が死んでいる。部活が忙しかったのか、はたまたこの人たちのハイテンションさに滅入っているのか。兎も角、こんなに楽しげな友達がいることを知り、私はちょっぴり安心した。



雅治くんの友達

(可愛い子達だな。やっぱ雅治くんが大人びているだけだよね、うん)




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