小説 | ナノ


「じゃあ行ってくるわね。なまえ、銀時くんの言うことちゃんと聞くのよ」
「はいはいわかったって」



 ある休日、お母さんが啓介を連れて朝からでかけた。キャッホーフリーダムだぜ!と喜ぶのも束の間、ソファで寝転ぶ私に銀ちゃんはため息を吐いた。


「お前、休みの日こそチャンスだろうが」
「は、なんの?」
「掃除とかしてよォ、良いことしたら更生ポイントアップじゃね」


 なんのポイントだよ。まあ言ってることはわかる。でもせっかくの休みだし少しはだらだらしたいというのが正直なとこであって。私はつくづくのび太だと思う。


「なんかパッパッと掃除できる道具出してぇ〜」
「仕方ねえなあ……パリラパッパラー渾身のチョップ〜」
「いたぁ!」
「やる気出たか」


 額を押さえ、渋々ソファから起き上がった。わかったわよ、やりゃあいいんでしょ。


「じゃあ、頑張れ」
「銀ちゃんも手伝ってね」
「あ、俺ちょっと分度器忘れたからとりに帰るわ」
「いらねーだろ!聞いたことあるセリフだし!言い訳はいいから手伝ってー」









 ってことで2人で雑巾がけを始めた。地味だけど、綺麗になってくのが目に見えて嬉しい。


「あ、ごめん」
「おう」


 銀ちゃんの足に当たった。


「あ、ごめん」
「おう」


 次は銀ちゃんの腕に。


「あ、ごめん」
「……おう」


 銀ちゃんの背中に。


「あ、ごめ――」
「お前さァァァ!」


 頭がごっつんこしたとき、銀ちゃんが雑巾を床に叩きつけた。


「なんなのお前さっきから!当たり屋ですか?陰湿なんだよ!」
「え、なにその言いがかり!銀ちゃんが私の行く先々で邪魔してるんじゃん!」
「いやいやお前が俺の軌道遮ってるからね!視界にしましまパンツがチラッチラッ入ってきてうっとうしいからね!」
「パンツ見てんじゃねェェ」


「あらあら、楽しそうね」


 お母さんが帰ってきた。結局どこぞのもじゃもじゃのせいでリビングの半分も拭けなかったよチクショー。つうかこの光景を見てどこが楽しいと思ったんだよお母さん!あぁやっぱこいつとは合わないわ。最近ちょっと見直してたけどやっぱパスだわ。


「俺の方こそ願い下げだお前みたいな野蛮人」
「勝手に人の心の声を聞かないでくださいー」
「ばーかナレーションだから聞こえるんですー」
「ナレーションとか言うのやめてくださいー」




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テーマ「人外ファンタジー」
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