小説 | ナノ


「もう最低最悪だよ、マダオだよあいつは!」



 教室を私の怒声が支配する。途端に室内は静まり返って、クラスメートの視線が一斉に集中する。私はその視線たちに『見んじゃねーよ』の意を込めて睨み返す。段々とざわめきを取り戻す教室。アキは笑って私の机に座った。


「ご機嫌ナナメだねー」
「朝から良いことない。変な夢見るしパジャマは甘ったるい臭いになるし私のウィンナー食べるし」
「弟くん?」
「違う。あの駄目教師」
「え、坂田先生?一緒に住んでんの?」
「あー…うん」



 しまった、口がすべった。案の定、アキはめちゃめちゃ食いついてくる。恋愛の話が大好きなのだ。私があしらおうとしても、もうアキからのがれることはできない。アキの笑顔の脅迫は無視したら最後、ジャーマンスープレックスどころでは済まない。


「なんでなんでなんで?」
「えっと、親戚。そう、親戚なんだよねあの人。で、居候、みたいな」
「へぇー、そうなんだぁ」

「おーい、なまえー」


 廊下を見ると、けだるそうに突っ立っている奴がいる。いまのタイミングで来るなんて、図っているのかな。いらいら。


「旦那が呼んでるよー」
「だ、旦那!?違、ただの居候で」
「ほらほら、行ってきな」


 背中を押され、よたよたと歩き出す私。もういいや、弁解も暴走したアキには効かないし。誤解がいつか解けるまで待つしかない。そう思いながら扉まで行く。



「なに?」
「お前、昼休み時間ある?」
「? あるけど」
「じゃ、国語準備室な」
「はい?」



 それだけ言い残し、野郎はさっさと行ってしまった。拒否権は無いんですかー。苛々しすぎて頭パンクしそうな私の耳に、チャイムが響く。





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