小説 | ナノ


「何してんの!なんで来てんの!」
「家に居てても仕方ねェだろォ?」
「その白衣、その眼鏡…思い切り銀八じゃん!」
「おっさすが俺のファン。わかってんじゃねぇか」
「ファンじゃねェェェ!」


 こんなに必死なのに、ヒラリとかわされる。ムキになってるあたしのが馬鹿みたいだ。みんなも普通にやり過ごしてる。なんで? 銀ちゃんだってびっくりしろよ。ますます、銀ちゃんの存在を認めざるをえなくなってきた。みんな敵なのか。


(誰かひとりでも共感してくれる人は居ないものか…)


 銀ちゃんの説得は諦めて、席に戻る。大きなため息を出して机にうなだれた私の頭上に、友人・アキが乗っかってくる。


「ぐえ、」
「どうしたー、元気なさげじゃん」
「あのさぁアキ、真っ剣に聞いて?」
「何?」
「今日来た先生さ」
「うん」
「…銀ちゃんに、似てない?」
「は?なにそれ」
「え、ほら、あたしが好きって言ってた漫画の」
「…あんた、いくら漫画好きだからって頭おかしくなった?」


 どうやら、本当にみんな銀ちゃんをぎんたまの銀ちゃんと認識していないらしい。知名度低いのかな。ざまあすぎる。ってそうじゃなくて。おかしいな。気付いてもいいはずなのに。




「おーい」
「…」
「無視すんじゃねー」



 放課後。昇降口に銀ちゃんがいた。黙って通り過ぎようとしたらチョップを喰らった。痛い。


「何よ」
「帰ろうぜ」
「仕事は?」
「もう無ェけど?」
「ふーん…」



 抵抗する気力はもはや残っていなかった。もう同じベッドで寝ちゃった仲だし、帰るくらいいいか。すでに開き直りモードである。



「クラス全員、みんな銀ちゃんを銀ちゃんだと思わないなんておかしいと思わない?」
「意外とわからねェんじゃねーの?」
「そんなもんなのかなー」
「そんなもんだろー」


 適当にあしらわれてるみたいで腹が立つ。こいつのせいで悩んでるっていうのに。馬鹿馬鹿しくなってきた。


「あーもー」
「なんだよ」
「むかつくっ」
「うお!?タックル?なんでタックル?」
「むかつくから」



 その口元のチュッパの棒折ってやりたい。




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