小説 | ナノ


 「ってことだから」とだけ残し、啓介は部屋を出る。バタン。むなしく響く。つうかあの子なんであんなに飲み込み早いわけ? 夢で自分が出てきて、酒の席で出会った漫画のキャラが現実に来るからと言われて、普通そうですかってなる? そんで本当に来る? ありえない。あり得るわけがない。


「あー、じゃあ、まあ、宜しくってことで」
「嫌よ」
「は?」
「みんな、私を騙してるんでしょ。チッチッチッ、そこまで馬鹿じゃない」
「お前なあ、もういい加減認めろよな」
「やだ!」
「まだ言ってるの?夕飯、できたってさ。あ、あと無駄だから」


 トントンと階段を降りる音が部屋のなかまで届く。私の考えが読みとられているようだ。「無駄だから」という言葉は私の頑張りが否定されたみたいで腹が立つ。なによ私よりずっと子供のくせに。足掻いてなにが悪いの? ああわかったわよ証明してやんよ、私がマトモだということを。ナメんなよ、伊達にお前より長く生きてないんだからね!



「なまえ早く食べなさい。銀時くんも、遠慮せずに食べてね」


 食卓を見て、絶望した。私の椅子の隣は出張中の父の席。そこにきちんとご飯が用意されていた。「無駄だから」啓介の声が頭んなかでぐるぐる回る。立ち尽くす私の隣で、頭痛の原因である奴は「あ、なんかすいませんね」なんて言って茶碗を手にとるからモジャモジャを引っ張った。


「あだだだ」
「何してんの!」
「やべ、これ今度こそハゲたんじゃね」
「聞けェェェ普通に食卓囲んでんじゃねぇよ!」
「だって俺お前が更生しねぇと帰れねぇし」
「…そう、わかった。ええやってやりますよ、やりますとも。全力で更生してやる!」




 宣誓。私、みょうじなまえは現実を取り戻すべく、スポーツマンシップに則り?、正々堂々と更生すること誓います!




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