小説 | ナノ


「ば、馬鹿にしないでよ!いくら私だって2次元と3次元の区別くらい付けられてるんだから!コスプレでしょ!?」
「は?コスプレってなんのことだ。よくわかんねぇけどそんな趣味を持った覚えは無ぇぞ」
「つうか酒クサッ!」


 無い知恵を絞って自分を落ち着かせようとしたけど、この状況をスマートに飲み込めるほどの対応力は私の脳みそ細胞を全部使っても到底間に合わない。


「整理つけよう、うん。順序立てよう」


 己に言い聞かせるように私はつぶやいた。1度深く呼吸をして、床に正座する。それを見た銀ちゃん(仮)もつられて姿勢を正した。


「あなたの名前は?」
「あん?坂田銀時だけど」
「なんで私の引き出しから出てきたわけ」
「昨日呑んだあたりまでは記憶があんだけどな〜」


 ポリポリと顎を掻く姿、死んだ魚の目、もっさりした髪。どこをどう見てもやっぱり銀ちゃんだ。でも、こんなの、ありえるわけがない。


「こんなのおかしいっ絶対おかしい!」


 私は立ち上がりベッドのコミックスを手にとって銀ちゃん(仮)に突きつけた。


「見て!これ銀ちゃんでしょ。私にとって、つうかこの世界において銀ちゃんは漫画の話なんだよ?なのになんで銀ちゃんが現実にいるわけっ?」
「まあまあ落ち着け少女よ」
「お前のせいで落ち着けないんだろうが!私の平凡な日常を返せ!」
「うわ、本当に俺みたいだなこれ。あっでも本物の銀ちゃんはこんな駄目人間じゃないからねウン。実は超エリートサラリーマンで」
「捏造してんじゃねェェェェ」


「ちょっと、うるさい」


 ガチャリと開いた扉の向こうに我が弟・啓介が立っている。いつもはうざいけどいまはまさしくメシアに見えた。こいつの脳細胞を持ってすれば解決できるかもしれない。私は愛する弟を抱きしめた。


「啓介〜」
「気持ち悪い」
「このモジャモジャが引き出しから出てきたの。もうわけわかんなくて」
「え、この人…」
「うん、そう。さすが啓介、頭の回転が早いわ私と違って」
「お姉ちゃんの教育係でしょ?」
「…え?」




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