小説 | ナノ


「この子は、なまえといいます。仲良くしてあげてくださいね」

 先生の影に隠れてこちらを遠慮がちに見てきている。それが、初めて見たなまえだった。



 女は嫌いだ。オトナの女ならまだしも、子供なんてもっての他。すぐピーピー泣くし、どこまで冗談が通じるのかわからない。俺が嫌いなものはもう1つ。うじうじしてる奴だ。つまり、俺の隣にいるこいつは、その2大要素をふまえていて、不愉快な存在でしかない。話しかけたいなら話したらいいのに、こちらが気を遣って目を合わせてもすぐそらしやがる。
 先生も先生だ。こんなわけわかんねぇ奴連れてくるなんて。先生は、最近こいつにかまってばっかりだ。気に入らない。こいつさえいなければ。俺は足元にあった小石を蹴っ飛ばそうとした。こんなふうにこいつにも出来たらいいのに、なんて思いながら。そしたらつま先が小石より先に地面に当たって、激痛が走る。

「〜〜〜っ」
「だ、だいじょ――」
「おーいなまえ、高杉のクソヤロウなんて放っておいてこっち来いよ」
「あ…」


 くそ天パ野郎の声がして、なまえは立ち上がった。なんだよ、結局そっちに行くんじゃねえか。気に入らねぇ。
 少し走って、なにかを思い出したように戻ってきたそいつを、俺は足をおさえながら睨み上げる。怯えながら、裾から取り出してたものは、花柄の絆創膏。


「いたくなくなったら、あそぼう、ね」


 ぎこちなく笑ったあと、駆けていく背中を目で追いかける。ばーか、使えるかよ。こんな柄。気に入らない。血も心臓のバクバクも止まらない。あぁ、全部あいつのせいだ。



もう随分、昔のこと


(なんだよ高杉、ダッセェ絆創膏ー)
(うるせぇ。お前の頭よりマシだ)
(あんだと!)
(飽きないな、お前達)
((黙れヅラ))
(ヅラじゃない、桂だァァァ)


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