小説 | ナノ


 顔を上げると、窓の外には朝焼けの光が家々のあいだからあふれていた。あぁ、綺麗だな。あたしとは、大違い。



朝焼け、君の唄。



「なんつー顔だ」

 放課後、教室でひとり外を眺めてると後ろから銀ちゃんの声。扉に寄りかかった体勢を立て直し、隣に来た。昨日と同じ煙草のとイチゴ牛乳だと思われる匂いがまざって感じられた。オレンジ色が銀髪に反射してキラキラしてる。いまは帰りたくない。なるべく部屋にいたくない。思い出に溺れて窒息死しそうだから。だから、ひとりでいたのに、あたしを困らせる本人が来ちゃった。

「どうしたよこんなとこで」
「…別に」
「あとその目。スゲェ腫れてっけど」

 窓の外を見たまま、銀ちゃんは言う。朝のHRからよく目が合うなとは思っていたけど、心配してくれてたのかな。やっぱり、優しいな。この黄昏のようだね。いや、朝焼けでもあるかな。始まりも終わりも、あたしには銀ちゃんだけだよ。
 「銀ちゃんを想って、ひとりで泣いてたんだ」そう言えたら、どうなる? 楽になれる? またそばにいれる?
 風は頬を撫でる。誰かさんの掌みたいで、あぁ、また泣きそうだ。

「遅くまで勉強、してたの。ほら、せっかく教えてもらったから、復習」
「ほー、ちったあやる気出たみたいだな」
「またよろしくね」
「んー?あー…、おう。気が向いたらな」

 笑顔が太陽みたい。まぶしい。目を開けてはいられない。その肩まで、あと1歩。踏み出せたら、寄り添えたら、どれだけ幸せだろう。
 知らないあいだに、こんなに好きになってたんだね。



私がね
泣いたことは
しらなくていい
それでいいよ



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bgm by ミク

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