小説 | ナノ


 山中で見つけ出したときには、佐助はすでに死んでいた。生きてきたなかで、一番受け入れ難い事実となった。俯せで、じっと動かない。「なーんちゃってね!驚いた?」と笑ってくれることを幾分か待った。そのまま時間が経つに連れて馬鹿げた妄想だと思い知らされた。唾を飲み、ゆっくりと片膝をついて、わたしは佐助の髪に触れた。馬鹿者、この様な派手な色をしているから、敵に見付かったのだ。
 そっと右腕を持ち上げ、其れを自分の首へと回し、佐助を担いだ。走って行けば早いのだが、どうしてだか身体に力が入らない。一歩、また一歩、踏み出すたびに視界が滲んでいく。情けなく嗚咽が漏れる。ぼたぼたと両の目から溢れ出すその水が、わたしの衣服を濡らしていった。佐助が繕ってくれた揃いの忍着。折角恥じをしのんで着てやったというのに、何故、見てはくれないのだ。
 幸村様に、伝えよう。主の元へ還らない忍は、忍ではない。このわたしが帰還させてやる。佐助、感謝するがよい。きっと情に篤い幸村様のことだ。小さくとも葬儀をすると言い出すに違いないから、それもわたしが丁重に断っておく。最期まで影の者としての責務を全うさせてやりたいと申せば、幸村様とて解って戴けるだろう。わたしが後で燃やしてやる。お前が好いておったかすがではなくわたしであること、文句は聞かぬぞ。雲の上で愚痴を零しているがよい。


「佐助…重いぞ、馬鹿者……」



カ シ ス



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