小説 | ナノ


 夏休み初日。さっそく大道具の仕事に駆り出され、朝早くからわざわざ学校に来た私。来るだけで汗だく。嫌だね本当夏は。なんてぼやきながらホールの扉を開けた、が。人っ子一人いないんです、けど。窓の外から蝉の鳴き声が聞こえる。私は暫く立ち尽くし、白板に貼ってある紙に気が付いた。


『この前集会サボった罰として、今日はなまえだけ臨時ね。他はもちろん休みだから』


 字体からしてアキだということがすぐにわかった。明日大道具の仕事だよってメールくれたときやたらハートが多かった原因が判明。くっそあいつ人で遊んで楽しんでやがるな。振り向けば、大量の段ボールが見える。これでセットの一部を作れということなんだろうけど。


「無理に決まってる…!」


 特別背が高いわけでもない私が、こんな大きな段ボールを巧みに操れる筈ない。それに何より、私不器用だよ…! 中学んとき技術の実技で先生に鼻で笑われたくらいだよ! あぁもうどうしよう。帰っちゃおうかなあ〜。暑いし、だるいし。でもアキ怒らせたら怖いしなあ。仕方ない。出来るとこまでやろう。


「えぇっと、お城だよね。ここを切って……」
「ちょ、ハサミ」
「あ、うん」
「面倒臭ェな大道具って」
「そうそう。それを私一人にさせるなんてそんな鬼畜プレイ望んでない…ってなんで居るの!!?」
「ここにお前が居るからさ」
「いやいや!そこに山があるからさみたいに言われても!」
「一人じゃ出来ねーだろ、お前のことだから」
「…んじゃ、そこ持ってて」
「お、素直だな」
「だって本当に一人じゃ無理だもん」


 膨れっ面の私を挑発するように、銀ちゃんは私の頭を撫でる。まるでムツ●ロウさんのように。なんでだろう? 悪い気はしない。なんて言ってやらないけど。









「お城完成ー!!」
「ハリボテにしちゃあ上出来だな」
「こら、ハリボテとか言わないの」
「よし、昼にすっか」
「うーす!」
「テンション高ェな」
「だってお腹空いてるもん」



 職員室に寄って、銀ちゃんも自分のお弁当持って、私達が向かったのはやっぱり国語準備室だった。打ち合わせしたわけでもないけど、それぞれの指定席に座り、お弁当を広げた。


「もーらい」
「あっ!もう、銀ちゃんのだって同じものが入ってんのに」
「人のモンのが美味そうに見えるときあんだろ」
「じゃあ私も貰うね」
「だめですぅー窃盗の罪で訴えますぅー」
「そういうとこ子供なんだから…。あ、」
「ん?」
「今日、手伝ってくれてありがと」
「あぁ、おう」
「ねえ、なんでホールに来たの?」
「だからそれはお前、そこにお前が居たからさっていう」
「真面目に答えろし」
「………もーらい」
「あぁっ!!」




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