在 ‐エルファス絶望期‐ † 静寂が訪れる暗き森に気紛れに僕は足を踏み入れる。 深い深い森の中。 僕の足音以外は鳥の鳴き声と獣の呻声。 それら獣には意志はなく、ただ本能のままに生きる。 ―――魔物達も然り。 そんな心地好い空気に身をまかせ、 ただただ足を進める。 そして見つけた一輪の薔薇の華。 森の木漏れ日の恵みを受ける薔薇。 一輪ながらに気高く麗しく咲く薔薇。 その麗しき薔薇に影が落ちる。 ―――魔物が、今にも薔薇を踏もうとした瞬間。 魔物が一瞬の内に灰と化し、風がそれを運ぶ。 ―――僕がしたのだ。 僕はその白き薔薇に手を伸ばす。 † 薔薇は無残にも僕の手で握り潰される。 手のなかに残る花びらと、 手から零れ落ちた花びら。 「・・・・・・・・ふふふ」 美しい白い薔薇は消え、 ――――妖艶な笑みを浮かべる白い人が残った。 華が存在したしたと言うことを―――もう、誰も知ることができない。 ・・・・ただ一人を除いては。 Fen. [*前] | [次#] ページ: 戻る |