パチィ、っと一際大きな焚き火の音に思わず身を震わせる。 「――――まだ起きているのか?」 そのわずかな気配を察したのか彼が私に声を掛ける。 そんな彼の気遣いが嬉しくて同時に申し訳なく思った。 「あ、すいません。 ……起こしてしまいましたか?」 彼は起き上がり、私と手が届くか届かないかの位置に身を置く。 「今日のことを考えていたのか?」 そう私に尋ねる彼。 私は返答できずにいた。 考えていたことを見抜かれたように思った。 自分の中に生まれたもの。 ・・・・彼には知られたくなかった。 「―――過ぎた事を気にするのは時間の無駄だ。 そんなくだらないことより次のことを考えろ」 不愛想に言い放つ彼。 そんな言葉、一つ一つに彼の不器用な優しさが見える。 そんな彼の優しさに自然に笑みが零れる。 「――――――――はい。」 私は彼の端整な横顔を見る。 夜の暗がりと焚き火の光が、私の紅い顔を隠し彼の存在を示しだす。 彼の優しさに甘える私。 ・・・・残るのは冷たく鋭い胸の痛み。 それでも私は、月の輝きに感謝し、祈りを捧げた。 ![]() Fen. [*前] | [次#] ページ: 戻る |