消えた日常


「さっさと起きなさい!もう、朝よ!」

「ふあっ!!」

町の宿の一室。いつもの怒鳴り声で、アルシャインは幼なじみに叩き起こされる。

「ん?ああ?!んあーーー!!」

「何寝ぼけてるの?ご飯できてるわよ」

まだ夢の中から抜け出せないまま飛び起きて奇声を発するアルシャインに、アイリーンは呆れながら

「はい、さっさと顔を洗ってくる!寝癖も直す!」

きびきびと朝の支度を促す。

「ふぁい!」

目をこすりながらよたよたとおぼつかない様子でベッドから降り、返事だけは威勢よくアルシャインは宿の洗い場に向かう。

「……まったくうるさいな〜もう。自分が騎士になりたいのを僕にまでつきあわせないでよ……」

アイリーンの見えないところで愚痴をこぼしながら顔を洗うのも、いつもの朝の光景だった。
そこへ、遠くから彼を呼ぶ声が聞こえた。

「……あん?」

彼が声のする方を見やると――

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