「……何だその生ッちろい身体は」

「なっ!?」

セラはくるりと背をむけ、肩で手をひらひらと追い払うように振る。

「無理だ。諦めろ。お前には向かん」

つかつかと去ろうとするセラを、アルシャインは慌てて追い縋る。

「そんな、ちょっとまっ……置いてかないで下さいよ!!」

「喧しい!!お前は基本がないのだ!!」

セラは纏わりつく彼を煩そうに引き剥がし、力を込めて言い放った。

もっと身体を鍛えるのだ!!『照り』が出るほどにな!

「て……照り?」
アルシャインとセラの頭には、磨き抜かれた筋肉をてらてらと輝かせたボルダンの戦士が思い浮かんだ。
「あのーー……ちょっといいですか?」

言いにくそうに進言するアルシャイン。おそらくセラは誤解している。

「あーゆー照りって、油を塗って、わざと筋肉がよく見えるようにしてあるんですよ。普通に鍛えただけじゃ、照りは出ないと思いま………」
「喧しい!!そんなことぐらい知っている!!なめているのか?!ものの例えの話だ!馬鹿者!」

慌ててアルシャインの言葉を遮ったセラだったが、実は今初めて知ったのだった。恥ずかしさで赤らんだ顔を背けて隠す。

「ああ……すいません、すいません」

ひと息ついて、沈黙が訪れると、セラは一呼吸置いて、

「そうだ、お前は体は期待できんが、特別に秘技を教えてやろう」

と、思い付いたように言った。

「お前のように痩せたやつでも有効な秘技だ。その名もセ……」

「ひょっとして、それ、『セ○シーコ○ンドー』ですか?」

アルシャインには思い当たることがあった。うっかりセラの言葉を遮ってしまったが……

「知っていたのか?!」

図星だったようだ……。

「ちょっと前流行ってましたからね、そのマンガ」

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